寒暖差による血圧上昇に注意!危険なサインとすぐできる対策とは?

お風呂上がりの動悸(どうき)や寒くなると頭痛が起こることはありませんか?これらの不調は、寒暖差による血圧の大きな変動や、自律神経の乱れが関係しているかもしれません。血圧の乱高下は、放っておくと脳出血や心筋梗塞などの重大な病気につながる場合があります。

今回は、寒暖差が血圧に与える影響や注意が必要な人の特徴、予防のポイントについてご紹介します。

その症状、寒暖差による「血圧の変動」が原因かも?

季節の変わり目や、朝晩の冷え込みが強い時季に「なんだか体調が悪い」と感じることはありませんか。
実はその不調、寒暖差による血圧の急な変動が関係している可能性があります。

日常で感じやすい不調

寒暖差によって血圧が急激に変動すると、血管や心臓、脳に一時的な負担がかかり、以下の症状が現れることがあります。

  • めまい
  • ふらつき
  • 立ちくらみ
  • 頭痛
  • 動悸

特に「お風呂上がりにめまいがする」「冷え込んだ朝に立ちくらみがする」といった症状がある場合は、寒暖差による血圧の急な変動が関係しているかもしれません。

血圧の乱高下が身体に与える影響

血圧の乱高下は、血管に強い負担をかけ、血管が破れたり詰まったりするリスクが高まります。そのため、以下のような命にかかわる病気を引き起こすリスクがあります。

  • 脳梗塞・脳内出血
  • 心筋梗塞
  • 大動脈解離(だいどうみゃくかいり)

また、血圧が高くても自覚症状はほとんど出ないこともあり、寒いときに体調不良を感じやすい方は、日ごろから血圧を意識しておくことが大切です。

なぜ気温の変化で血圧が上がるのか?

気温の変化によって血圧が変動する背景には、身体の仕組みが関係しています。寒暖差によるリスクを防ぐためにも、その仕組みや血圧が不安定になりやすい場面を知っておきましょう。

血圧とは

血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際に、血液が血管の壁を押す力のことです。
心臓が収縮して血液を動脈に送り出すときの最も高い数値が「上の血圧(収縮期血圧)」、拡張して血液を取り込むときの最も低い数値が「下の血圧(拡張期血圧)」です。

日本高血圧学会のガイドラインでは、正常・高血圧の目安は以下のように定められています。

正常・高血圧の基準値

※横にスクロールできます。

血圧分類 診察室血圧
(mmHg※1)※2
家庭血圧
(mmHg)※3
分類の目安
正常血圧 上の血圧120未満
かつ
下の血圧80未満
上の血圧115未満
かつ
下の血圧75未満
理想的な血圧値
正常高値血圧 上の血圧120~129
かつ
下の血圧80未満
上の血圧115~124
かつ
下の血圧75未満
正常範囲内だが、やや高めの血圧
高値血圧 上の血圧130~139
かつ/または
下の血圧80~89
上の血圧125~134
かつ/または
下の血圧75~84
高血圧予備群で注意が必要
I度高血圧 上の血圧140~159
かつ/または
下の血圧90~99
上の血圧135~144
かつ/または
下の血圧85~89
軽症の高血圧
II度高血圧 上の血圧160~179
かつ/または
下の血圧100~109
上の血圧145~159
かつ/または
下の血圧90~99
中等症の高血圧
III度高血圧 上の血圧180以上
かつ/または
下の血圧110以上
上の血圧160以上
かつ/または
下の血圧100以上
重症の高血圧

表:成人における血圧の分類(高血圧)日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」参照

※1「水銀柱mmHg(ミリメートル・エイチジー)」は血圧の単位で、水銀を何mm押し上げるかを表します。
※2 医療機関で測定する血圧
※3 自宅で家庭用血圧計を用いて測定する血圧

血管の拡張と収縮が起きる

気温の変化に応じて起こる血管の拡張と収縮が、血圧の変動に影響を与えます。

気温による血管の変化
気温 血管の状態 血圧への影響
寒い 収縮する(ぎゅっと細くなる) 血液が通りにくくなり、血圧が上がる
暖かい 拡張する(ゆるんで太くなる) 血液が流れやすくなり、血圧が下がる

寒暖差が大きいと、血管の拡張と収縮が短時間で繰り返され、血圧の急な変動につながります。

自律神経のバランスが乱れ、血圧が不安定になる

自律神経には、活動時に働く交感神経とリラックス時に働く副交感神経があり、体温や血圧のバランスを調整しています。寒暖差が激しい環境では体温を一定に保つため、交感神経(血圧を上げる)と副交感神経(血圧を下げる)の切り替えが頻繁に繰り返されます。

そのため、自律神経のバランスが乱れやすく、血圧がさらに不安定になってしまうのです。寒暖差に注意が必要なのは、以下のような場面です。

  • 朝晩の気温差が大きい季節の変わり目
  • エアコンで冷えた屋内から、暑い屋外へ出るとき
  • 暖房の効いた部屋から、寒い屋外やトイレ・お風呂場へ移動するとき

血圧を安定させるためには、寒暖差をできるだけ減らす工夫が大切です。

特に注意が必要な人の特徴

寒暖差による血圧変動は誰にでも起こりうるものですが、特に注意が必要な人の特徴があります。

加齢やライフスタイルの変化があった

加齢に伴い血管の壁は徐々に硬くなり、しなやかさが失われていきます。血管の柔軟性が低下すると、寒暖差による血圧変動の影響を受けやすくなるのです。
更年期では、ホルモンバランスの変化により、血圧の上昇や血管の硬化が起こる場合があります。こまめに血圧を測り、心配な場合は医師に相談しましょう。

また、ライフスタイルの変化や外的要因によるストレス、睡眠不足などによって自律神経が乱れがちな方も、寒暖差による影響を受けやすい傾向があります。ふだんから身体を冷やさない工夫をし、十分な睡眠を取ることが重要です。
特に、気温が上がる時季にふらつきが増える場合は、すぐに医療機関を受診してください。

高血圧の診断を受けている・血圧が高めである

すでに高血圧の診断を受けている方や、血圧が高めの方も、寒暖差に注意が必要です。

高血圧により動脈硬化が進行している場合、血圧の乱高下によって脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こすリスクが高まります。
また、血圧を一定に保つ機能が低下している場合もあり、激しいめまいや立ちくらみ、失神につながる可能性があるため油断は禁物です。
日ごろ高血圧の薬を飲んでいる方は、自己判断で薬の量を変えたり、服用を中止をしたりすることは避けてください。

もともと血圧が低い

高血圧の方だけでなく血圧が低い方も、寒暖差に注意が必要です。寒暖差によって自律神経のバランスが乱れると、血圧を上手くコントロールできなくなり、めまいやふらつきといった症状が出やすくなります。

これらの症状は貧血とよく似ているため、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。

血圧の急な変動を予防する6つのポイント

血圧の急な変動を防ぐ6つのポイントをご紹介します。

ふだんの血圧を把握する

血圧計を使って、朝と夜など決まったタイミングで血圧を測る習慣をつけましょう。ふだんの血圧を把握しておくことで、急な変動にも気付きやすくなります。

水分をこまめに摂る

寒い時季は喉の渇きを感じにくいため、知らないうちに水分が不足する「かくれ脱水」に注意してください。

脱水により血液の粘度が上がると、心臓や血管に負担がかかります。そこに寒暖差による負担が加わると、持病がある方は心筋梗塞や脳卒中につながる可能性が高まります。

そのため、喉が渇いていなくてもこまめに水分を摂ることが大切です。特に、入浴前と寝る前にコップ1杯の水やお茶を飲む習慣をつけましょう。

塩分の摂りすぎに気を付ける

塩分を摂りすぎると、体内の水分量が増えて血液量が多くなり、血圧が上昇しやすくなります。塩分を摂りすぎないよう、以下のような工夫を心がけましょう。

  • 薄味を心がける
  • 麺類の汁は残す
  • ドレッシングは少なめにする
  • しょうゆはかけずにつけて使う
  • 減塩調味料や出汁、香辛料を活用する

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、食塩の1日当たり目標量を、成人男性が7.5g未満、女性が6.5g未満と定めています。また、高血圧の方は1日6g未満が推奨されています。

起床時の寒暖差を小さくする

冬場に温かい布団から出る瞬間は、寒暖差が大きく、血圧が上がりやすいタイミングです。早朝は、交感神経が急激に活性化されて血圧が上昇する「モーニングサージ」も起こりやすくなるため、血管に大きな負担がかかります。そのため、寒暖差を小さくする工夫が重要です。

  • 暖房のタイマーをセットして、起きる前に部屋を暖めておく
  • 夜間トイレに行く際は、靴下や上着などで暖かくする

入浴前に脱衣所や浴室を温める

入浴時は脱衣所と浴室、湯船の寒暖差が大きくなりやすく、ヒートショックのリスクが高まる場面です。さらに、湯船でのめまいや失神、心筋梗塞などにつながると、溺水を招く恐れもあります。

入浴前に脱衣所を暖房器具で暖めたり、シャワーで浴室に温かい蒸気をいきわたらせたりすることで、寒暖差を小さくできます。湯船の温度は38~40℃を目安に、熱すぎるお湯は避けましょう。また、湯船から急に立ち上がらないことも大切です。

体温調節しやすい服装を心がける

寒暖差を肌に直接感じさせないようにすることも重要です。特に皮膚が薄く、外気の影響を受けやすい首・手首・足首を冷やさないようにすることが大切です。

冬場の外出時はマフラー・手袋・レッグウォーマーの活用や、すぐ脱ぎ着しやすい重ね着なども良いでしょう。

体調の変化に気付いたときの受診の目安

ふだんから血圧の変動に不安がある方や、すでに高血圧・糖尿病・脂質異常症などを指摘されている方は、内科や循環器内科に相談しておくと安心です。定期的にかかりつけ医を受診し、血圧の状態を確認してもらうことで、寒暖差による急な変動のリスクを早めに把握できます。

また、以下のような症状が見られた場合、脳梗塞・脳内出血や心筋梗塞などの恐れがあるため注意が必要です。いつもと違う異常を感じた場合は、迷わず救急車を呼んでください。

  • 頭・脳のサイン
    ・突然激しい頭痛がする
    ・ろれつが回らない
    ・顔や手の片側にしびれが出る

  • 胸・心臓のサイン
    ・突然激しい胸の痛みが出る
    ・胸が締め付けられるような圧迫感がある
    ・息苦しさや冷や汗が止まらない

  • そのほかのサイン
    ・立てないほどの強いめまいや立ちくらみが続く
    ・何度も気を失いそうになる

寒暖差の大きい環境を作らない工夫を

寒暖差による血圧の急な変動は、めまいやふらつきといった日常的な不調から脳梗塞・脳内出血や心筋梗塞などの重篤(じゅうとく)な病気まで、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。そのため、起床時や入浴時、屋内外の移動時などの場面で、寒暖差を意識することが大切です。体調の変化に気付いたときは、我慢せずに早めに医療機関へ相談しましょう。

参考文献・資料

記事監修

野原 弘義

精神科医/産業医

2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。

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