立ち上がったときや歩いているときに、ふらつきを感じたことはありませんか?一時的な疲れと思いがちですが、実は貧血や低血圧が原因の場合もあります。
身体のサインを見逃さず、症状の違いや対処法を押さえておきましょう。
貧血と低血圧の違い
貧血と低血圧は、どちらもめまいやふらつき、だるさなど似た症状が出ることから混同されがちですが、原因も対処法もまったく異なります。まずは違いを比較し、どのような点が異なるのかを確認しましょう。
| 貧血 | 低血圧 | |
|---|---|---|
| 原因 |
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| 主な 症状 |
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| なりやすい人 |
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| 検査 方法 |
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| 診断 内容 |
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貧血の原因と症状
貧血とは、血液中の赤血球または赤血球内のヘモグロビン量が減少し、体内に酸素が十分に運ばれていない状態です。主な原因は鉄分の欠乏で、月経過多、偏った食事、消化管出血などが関係します。また、ビタミンB12や葉酸の欠乏、慢性腎疾患や炎症性疾患による場合もあります。
貧血は主に女性や偏食傾向のある人に多く見られますが、成長期の若年者、栄養不足の人、高齢者も発症しやすい傾向があります。初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると顔色の悪さ、息切れ、全身のだるさ、めまいなどが現れます。
診断には血液検査が有用で、赤血球数、ヘモグロビン、血清鉄(けっせいてつ)、フェリチンなどを測定します。WHO基準では、ヘモグロビン値が男性13g/dL未満、女性12g/dL未満で貧血と診断されます。
低血圧の原因と症状
低血圧とは、一般的に上の血圧(収縮期血圧・最高血圧)が100mmHg※1以下、下の血圧(拡張期血圧・最低血圧)が60mmHg以下の状態を指します。原因には、体内の血液量の減少(脱水や出血)、心臓の拍出量※2低下、血管の拡張、自律神経の乱れなどが挙げられます。
主にやせ型女性に多く見られますが、虚弱体質の人、若い女性、長期間寝たきりの人、自律神経が乱れている人も発症しやすい傾向にあります。自覚症状としては、立ちくらみ、めまい、倦怠感(けんたいかん)、朝起きられない、頭が重く感じる、動悸(どうき)、冷え、場合によっては失神などが現れます。
検査では、横になった状態と立った状態で血圧や脈拍を測定し、必要に応じて心電図、心エコー、内分泌検査などを行います。
診断には明確な国際基準はありませんが、一般的に成人で上の血圧が100mmHg未満、下の血圧が60mmHg未満の場合を低血圧とし、立ち上がったあと3分以内に、上の血圧が20mmHg以上、もしくは下の血圧が10mmHg以上低下すると起立性低血圧と診断されます。
※1 mmHg(ミリメートル・エイチジー)」は血圧の単位で、水銀を何mm押し上げるかを表します。
※2 1分間に心臓から全身に送り出される血液の総量
貧血と低血圧の見分け方と受診の目安

貧血と低血圧の見分け方
- 貧血の可能性がある症状
顔色が青白い、動くと動悸や息切れがする、爪の色が白っぽい、下まぶたの裏側が白っぽい、疲れやすい - 低血圧の可能性がある症状
急に立ち上がるとふらつく、長時間立ち続けているとめまいが起こる、朝なかなか起きられない、午前中の調子が悪い、手足が冷えやすい
ただし、貧血と低血圧が重なって起こることもあり、自己判断が難しいケースも多くあります。例えば、貧血になると血液の循環が悪くなるので、その結果として血圧も下がりやすくなります。特に女性は、月経によって鉄分が不足しやすく、貧血や低血圧の両方が起こりやすい傾向があります。
貧血や低血圧に伴う症状を自覚したとき、「どの症状が出たら病院を受診すべきか」と迷う方も多いと思います。一般的に、経過観察となる場合が多いですが、中には緊急対応が必要なケースもあるので注意が必要です。
受診の目安
- 受診を検討する症状
顔色がいつもより悪い、軽いめまいや立ちくらみが時々ある、朝の目覚めが悪い日が続く、動くと動悸や息切れがする、身体がだるい状態が続く - 早急に受診すべき症状
突然のめまいや立ちくらみ、激しい動悸がする、意識が朦朧(もうろう)とする、冷や汗が出て顔面蒼白になる
症状の感じ方は個人差があるため、気になる症状がある場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
貧血と低血圧の改善・対処法
貧血や低血圧の改善・対処法として、日常生活の過ごし方がとても大切です。できることからはじめて、健康的な生活を維持しましょう。
食生活でできること
貧血や低血圧の改善には、日々の食生活を整えることが第一です。
貧血の場合は、鉄分を多く含む食材を積極的に摂り入れましょう。さらに、タンパク質、ビタミンC、ビタミンB群も組み合わせて摂ると効果的です。
貧血の場合に摂り入れたい食材
- ヘモグロビンの材料となる鉄分を多く含む食材
赤身肉、レバー、魚、豆類 など - 赤血球の材料となるタンパク質を含む食材
卵、魚、肉、豆腐 など - 鉄分の吸収を高めるビタミンCを含む食材
ブロッコリー、ピーマン、柑橘類 など - 造血を支えるビタミンB群を含む食材
豚肉、レバー、緑黄色野菜 など

低血圧の場合は、朝食を抜かずに規則正しい食事を心がけ、水分や塩分を適度に摂取して血流や循環を保つことが大切です。特に、ミネラル類を意識して摂るようにしましょう。これらの栄養素をバランス良く摂ることで、低血圧による立ちくらみやだるさの軽減が期待できます。
低血圧の場合に摂り入れたい食材
- 丈夫な血管や筋肉をつくるタンパク質を含む食材
卵、鶏肉、魚、大豆製品 など - 代謝を助け、体温調節に関わるマグネシウムを含む食材
ナッツ類、海藻、玄米 など

日常生活でできること
貧血や低血圧の改善には、日常生活の過ごし方も見直しましょう。
貧血の場合は、質の良い睡眠を取り、疲労をためないことが大切です。不規則な生活を避け、適度な運動を取り入れて生活リズムを整えましょう。
低血圧の場合は、生活リズムを一定に保ち、ゆっくり動く習慣を身につけることが有効です。起立性低血圧では、寝起きや座った状態から立ち上がる際に急に動かず、数秒かけてゆっくり立ち上がるようにします。あわせて、ふくらはぎの筋肉を動かすと血液が心臓に戻りやすくなり、症状が改善することもあります。このほか、暑さやアルコールは血管を拡張させ血圧を下げやすくするため、注意が必要です。
身体のサインを見逃さず早めの受診と生活習慣の改善を心がけよう
ふらつきやめまいは貧血と低血圧のどちらでも起こり、双方が影響し合う場合もあるため、判断に迷うケースも多くあります。日常的に症状がある場合は、放置せず医療機関で原因を確認するとともに、生活習慣を見直すことも心がけましょう。適切な対処を続けることで、日常の不調の予防にもつながります。
参考文献・資料
記事監修
野原 弘義
精神科医/産業医
2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。







