朝起きたくても起きられない・・・子どもの起立性調節障害とは?

朝起きられない、体調が悪くて学校へ行けない…お子さんにそんな様子が見られるなら、それは「起立性調節障害」という病気かもしれません。自律神経の不調が原因で、頭痛やめまい、だるさなどが起こり、不登校につながることもあります。
今回は、お子さんに多く見られる代表的な症状や家庭でできるセルフケア、病気への向き合い方などを解説します。

子どもの起立性調節障害とは

起立性調節障害とは、自律神経の働きが乱れ、立ち上がったときに頭痛やめまいなどの症状がみられる病気です。
人の身体は、立ち上がると重力で血液が下半身にたまり、心臓に戻る血液が一時的に減ってしまうため、血圧が下がりやすくなります。

通常であれば、自律神経のひとつ「交感神経」が血管を収縮させて血流をコントロールし、血圧を一定に保ってくれます。

しかし、自律神経の調節異常によって、立ち上がった際に血圧を上手く維持できず、脳への血流が減少してしまいます。その結果、立ちくらみや体調不良といった起立性調節障害の症状が現れます。

また、起立性調節障害は朝に症状が出やすいことも特徴です。脳の血流が低下することで、朝起きようとしても身体がうまく働かず、頭痛やめまい、強いだるさが生じます。そのため、学校生活に支障をきたすこともあります。
起立性調節障害は、小学校高学年~中学生に多くみられ、軽症も含めると小学生の約5%、中学生の約10%に症状があるとされ、女児にやや多い傾向です。

子どもの起立性調節障害の主な症状と4つのサブタイプ

起立性調節障害は、自律神経のバランスが乱れることで、さまざまな症状が現れます。また、血圧や心拍数の変化によって4つのサブタイプに分けられます。

起立性調節障害でみられる症状

症状の現れ方は多岐にわたり、一見すると病気とは気づきにくいものも含まれます。

例えば、お子さんに以下のようなサインがないか確認してみましょう。

症状のチェックリスト

  • 朝なかなか起き上がれず、午前中調子が悪い
  • 立ちくらみ・めまいを起こしやすい
  • 立ち上がったときに気分が悪くなったり倒れたりする
  • 入浴したときや嫌なことがあったときに気分が悪くなる
  • 少し動いただけで動悸(どうき)や息切れを感じる
  • 顔色が青白い
  • 食欲がない
  • 腹痛がある
  • 倦怠感(けんたいかん)や疲れやすい
  • 頭痛がある
  • 乗り物酔いをしやすい

※これらの症状がある場合でも、心疾患や内分泌疾患などのほかの病気が隠れていることがあるため、自己判断せず医療機関を受診しましょう。

代表的な症状として、起床時に目が覚めていても身体が重く、強いだるさによって起き上がれないことがあります。午前中は調子が悪く、午後になるとだんだんと元気が出てくることが多いのが特徴です。

また、脳への血流が低下することで、頭重感(頭が重い感じ)や頭痛、動悸などが起こりやすくなります。そのほか、少し動くだけで疲れやすい、顔色が青白くなる、乗り物酔いをしやすいといった症状もこの病気ならではのサインです。

こうした症状は、日常生活にさまざまな影響を与えます。調子が悪くなることで登校が難しくなり、集中力が続かず学力低下につながることもあります。また、就寝時刻が遅くなり、生活リズムが崩れがちになります。この悪循環が続くと、学校生活や友人関係にも大きな影響を及ぼしてしまうことも少なくありません。

起立性調節障害のサブタイプ

起立性調節障害は、立ったときに血圧や心拍数がどう変化するかによって以下の4つのタイプに分けられます。

サブタイプ 特徴
起立直後性低血圧 立ち上がった直後に大きく血圧が下がり、回復が遅いタイプ
体位性頻脈症候群 立ち上がったときに血圧はあまり下がらないが、心拍数だけが大きく増えるタイプ
血管迷走神経性失神 立ち上がって数分~10分ほどたったところで血圧の急降下とともに心拍数が遅くなり、失神するタイプ
遷延性(せんえんせい)起立性低血圧 数分~数十分立ち続けていると、だんだんと血圧が低下して失神するタイプ

これらのタイプを正確に判定するために行われるのが「新起立試験」です。起立前後の血圧・心拍数の推移や、血圧が回復するまでの時間を詳しく測定し、どのサブタイプに該当するかを判定します。

起立性調節障害への具体的な対応や支える側の心構え

起立性調節障害の症状と上手く付き合っていくためには、毎日の生活でできるセルフケアが大切です。それでも症状が良くならない場合は、薬による治療を行うこともあります。また、お子さんの気持ちに寄り添うかかわり方も重要です。

家庭で取り組める体調を整えるための生活習慣

日々の生活を少しずつ整えることが、セルフケアのポイントです。

  • 生活リズムを整える
    夜ふかしや昼夜逆転を防ぐため、朝はカーテンを開けて日光を浴びましょう。また、食事や入浴、外出などの日課を一定に保つと体内時計が整いやすくなります。
  • 十分な水分と適度な塩分を摂る
    水分をこまめに摂り、みそ汁やスープなどの適度な塩分を含む料理を食べることで、血流が増え、症状をやわらげることができます。
  • 寝る前のスマートフォンなどは控える
    寝る前はスマートフォンやパソコン、ゲーム機の使用を控えましょう。画面から発せられるブルーライトが睡眠ホルモンの分泌を妨げ、睡眠の質を低下させる可能性があります。
  • お風呂はぬるめのお湯にゆっくりつかる
    ストレスをためると自律神経が乱れてしまうため、日ごろから上手に発散することが大切です。ぬるめのお湯にゆっくり入ると、心身がリラックスでき、自律神経のバランスが整いやすくなります。
    ただし、体調が優れないときは無理をせず、不調を感じる場合は入浴を控えるようにしましょう。

上記に加え、日々の動作や服装への配慮も大切です。立ちくらみを防ぐために「起床時はゆっくり起き上がる」「急に立ち上がらない」ことや、血流を妨げないよう「体を締め付けない服装」を心がけましょう。また、いつどんな症状が出たかを記録しておくと、自分の体調のリズムを知る手がかりになります。

具体的な治療法

セルフケアを続けても良くならない場合や、日常生活に大きな影響が出ている場合は、薬を使った治療を行う場合があります。薬は朝のつらさを軽くしたり、学校生活を送りやすくしたりするために使われます。

治療薬 効果
ミドドリン塩酸塩 血管を収縮させ、血圧を上げる
メチル硫酸アメジニウム 交感神経の働きを活発にし、血圧を上げる
プロプラノロール塩酸塩 心拍数が速くなりすぎるのを抑え、動悸をやわらげる
漢方薬 半夏白朮天麻湯
(はんげびゃくじゅつてんまとう)
12種類の生薬を配合
めまい、立ちくらみ、頭痛をやわらげる
小建中湯
(しょうけんちゅうとう)
6種類の生薬を配合
腹痛をやわらげる
柴胡桂枝湯
(さいこけいしとう)
9種類の生薬を配合
さまざまな痛みや食欲不振をやわらげる

また、薬物療法に加えて心理面でのサポートも重要です。長く体調不良が続くと不安を抱えやすくなるため、医師やスクールカウンセラー、臨床心理士などと連携しながら心のケアを行う場合もあります。

病気への向き合い方

起立性調節障害のお子さんを支えるには、気持ちの問題ではなく、「身体の不調」として症状を理解することが大切です。

お子さんの不安やさまざまな気持ちを否定せず、共感や肯定的な言葉をかけるなどして、体調を確認しましょう。体調に波がある中で、少しでも起きられたときは、「頑張ったね」とできたことを認める言葉が励みになります。

朝は、身体は起きたくても起きられない状態です。そのため、無理に起こそうとせず、日光を浴びたりこまめに水分を摂ったりして、ゆっくり慣らすようにしましょう。朝起きられないときも、お子さんの気持ちに寄り添う心がけが重要です。

起立性調節障害は正しい理解とサポートが必要

起立性調節障害は、お子さん自身の意思ではコントロールできない、つらい症状を伴う病気です。単なる気持ちの問題ではなく、自律神経の不調が原因であることを周囲が正しく理解し、無理をさせない姿勢が求められます。

また、学校との連携も欠かせません。朝の不調や集中力の低下など、学校生活に影響が出ることも多いため、無理のない登校方法や教室での過ごし方を一緒に模索していくことが重要です。

お子さんの体調に寄り添いながらサポートを続けることが、回復への大きな助けになります。

参考文献・資料

記事監修

野原 弘義

精神科医/産業医

2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。

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