漢方薬といえば、以前は生薬を煎じて飲むものでしたが、いまでは細粒や錠剤など飲みやすい形になり、ドラッグストアでも購入できるようになりました。漢方薬には、一般的な西洋薬とは異なる独自の考え方があります。
今回は、漢方薬と西洋薬の考え方の違いや特徴について詳しく解説します。
漢方とは?西洋薬との違いって?
漢方薬と西洋薬は、いずれも「症状を改善し不調を治す」ために使用されます。では、漢方薬は具体的にどのような特徴を持ち、西洋薬とは何が異なるのか、詳しく見ていきましょう。
漢方薬は不調が起こりにくい身体を目指す
漢方薬は、中国から伝来し日本の風土や文化に合わせて発展した漢方医学に基づいて使われる薬です。
漢方医学は、身体の不調や症状がある場合に、ひとつの器官や臓器だけに注目するのではなく、「心も含めて身体全体のバランスの乱れをみる」という考え方です。心身全体のバランスを整えて自然治癒力を高めるというアプローチで、身体の不調や症状を改善します。さらに不調や症状を改善することは、体質を改善して不調が起こりにくい身体を目指すことにもつながります。

また、漢方薬は自然由来の生薬が複数組み合わされており、それぞれの生薬の成分が作用して、身体全体のバランスを改善します。
さらに、さまざまな症状が、ひとつの漢方薬で改善するのも漢方薬の特徴と言えます。例えば、頭痛と吐き気は別々の症状ですが、身体の冷えが原因で起こることがあります。この場合、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)でおなかを温めると、頭痛をやわらげ、同時に胃腸の働きを整えて吐き気を抑えることができます。
西洋薬は症状や原因にピンポイントで作用する
西洋薬とは、西洋医学に基づいて処方される薬で、ふだん「薬」と呼んでいるものの多くは、西洋薬を指します。検査や診察によって病気の原因を特定し、その診断に基づいて処方されるため、「病気や症状に対してピンポイントでアプローチ」し、治療効果が期待できます。

また、西洋薬は科学的根拠に基づいているため、効果が現れるまでの時間やその効果、副作用などをある程度予測できるのが特徴です。
西洋薬は、基本的にひとつの薬にひとつの成分だけで、特定の細胞や臓器に対して作用するように作られています。例えば、かぜを引いたときは、解熱鎮痛剤、せき止め、鼻水を止める薬、痰を切る薬など、それぞれの症状に対して数種類の薬を処方されることになります。
ほかにも、慢性疾患などでさまざまな症状や検査値の異常があると、血圧やコレステロールを下げる薬など、特定の症状や異常に作用する薬を飲むことになります。
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漢方独自の考え方「証」とは?
「証(しょう)」とは、患者さまそれぞれの病気の状態と体質を、漢方医学独自のものさしで総合的に判定し、漢方薬を選ぶ基準とするものです。同じ病気や症状でも証が違えば選ぶ漢方薬は異なります。証が違う漢方薬を服用しても期待した効果が得られないため、証の判断は漢方薬を選択する際に重要です。
検査などを踏まえて病名を診断し、それに応じた治療法や薬を処方する西洋医学とは大きく異なります。

例えば、慢性便秘の治療において、比較的体力があり胃腸も強い実証(じっしょう)タイプには、大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)や防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)を用います。一方、胃腸の弱さや顔の青白さ、冷えなどを伴う虚証(きょしょう)タイプには、麻子仁丸(ましにんがん)や大建中湯(だいけんちゅうとう)を用います。
漢方薬と西洋薬はどちらが良いの?
漢方薬と西洋薬では、病気に対するアプローチや効果の現れ方が異なります。どちらが優れているかではなく、それぞれの特徴を理解したうえで、症状や病態に合わせて適切に選択することが大切です。
漢方薬を使用する主な病気や症状
- 体質の改善(花粉症などのアレルギー体質、冷え症、虚弱体質など)
- 検査で異常が見つからない症状や原因が明らかでない病気(倦怠感:けんたいかん、心身のさまざま不調、耳鳴りなど)
- 副作用で西洋薬の投与が難しいケース(胃潰瘍がある方への鎮痛剤など)
- 加齢に伴う症状(夜間頻尿、腰痛、膝痛、気分の落ち込みなど)
西洋薬を使用する主な病気や症状
- 原因別に治療法が確立している病気(悪性腫瘍、感染症など)
- 緊急的な処置が必要な病気(心筋梗塞、脳卒中、外傷など)
- 速やかに抑える必要がある症状(高熱、けいれんなど)
- 検査値を確実に改善したい場合(血圧、コレステロール値など)
基本的に、慢性的な不調や体質にかかわる病気は漢方薬、急性症状や救急の処置、症状を引き起こす原因に直接働きかけて治療する場合は、西洋薬が適しているとされています。もちろん、即効性のある漢方薬や、効果が出るまでに時間が必要な西洋薬もあります。それぞれの特徴を理解し、互いに補い合うように活用するのが理想的と言えるでしょう。
「漢方薬=身体に優しい」とは限らない
身体に優しいイメージがある漢方薬ですが、漢方薬も医薬品であり副作用がないわけではありません。アレルギーや過敏症、消化器症状や不眠などの副作用が起こることもあります。特に、甘草(かんぞう)を含む漢方薬では、「偽アルドステロン症※1」といった重大な副作用が報告されており、広く使われている漢方薬でも注意が必要です。
また、漢方薬は、すぐに効果が出ないという思い込みで、体質や症状が変わったあとも服用し続けていると、生薬の作用が強く出たり、副作用に気付きにくくなることがあります。
次の場合には注意が必要なため、漢方薬を服用する場合は必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
※1 偽アルドステロン症は、手足の力が抜ける感じ、血圧が上がる、動悸(どうき)、こむら返り、筋肉痛などの症状が見られます。
- 漢方薬同士の併用
漢方薬に含まれる生薬の成分が重複して副作用が起こりやすくなる。 - 西洋薬との併用
西洋薬の効果が弱まったり、強く出たりすることがある。
薬の相互作用で副作用が出やすくなる場合がある。
上手に使い分けて両方の良いとこ取りを
漢方薬と西洋薬は、病気に対する考え方やアプローチの仕方が違うため、それぞれの得意分野に応じて使い分けるのが理想です。
ただし、漢方薬にも副作用のリスクや飲み合わせの注意点は存在します。安全に服用を続けるためにも、不安なことや気になることがあれば、自分だけで判断せず医師や薬剤師に相談しましょう。
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漢方薬の飲み方や、薬やサプリメントとの飲み合わせなど、ちょっとした不安や疑問がある場合は、ぜひご活用ください。
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参考文献・資料
記事監修
石黒 貴子
薬剤師/薬剤師歴26年











