睡眠薬を飲むと、なかなか起きられないと悩んでいませんか?それは「持ち越し効果」の影響かもしれません。今回は、持ち越し効果の原因と対処法を解説します。
睡眠薬を飲むとだるくて起きられないのはなぜ?
睡眠薬を飲むと、頭がぼーっとして起き上がれない状態は、睡眠薬の副作用のひとつで「持ち越し効果」と呼ばれています。これは、眠るための薬の成分が起床時まで身体の中に残ることで起こる現象です。
強い眠気や身体のだるさ、ふらつきなどを感じるため、日中の仕事や家事に支障が出ることがあります。さらに、足元がふらついて転倒する可能性や、車の運転時に注意力が低下する恐れもあります。朝の起きづらさは単なる寝不足ではなく、薬の影響が起床時まで持ち越されているサインかもしれません。

なぜ起こる? 持ち越し効果の4つの原因
持ち越し効果とは、睡眠薬の成分が起床時までに身体から十分に抜けないことによって起こる現象です。この現象には4つの原因が考えられます。
薬の作用時間が長すぎる
持ち越し効果が起こる大きな理由のひとつに、薬の「作用時間の長さ」があります。睡眠薬にはそれぞれ効き目が持続する時間が決まっており、その長さは薬の種類やその方の状態によって異なります。
特に注意が必要なのは、薬の成分量が体内で半分になるまでの時間(半減期)が、10時間を超える作用時間の長いタイプです。このタイプの薬は、起きる時間になっても身体の中に成分が残っているため、目が覚めてからも強い眠気やだるさが続くことがあります。
また、作用時間がその方の状態に合っていないと、起床後も眠気が残る場合があります。
服用中の薬のタイプがわからない場合は、医師や薬剤師に確認しましょう。
薬の量が多すぎる
服用している薬の量が多いことも、持ち越し効果が起こる原因のひとつに挙げられます。睡眠薬の適切な量は、個人の体格や体質によって異なります。処方された薬の量が自分の身体の許容量に対して多い場合、身体の中での薬の分解が起床時まで終わりません。
その結果、本来なら目覚めるまでに消えるはずの薬の効果が残り、起床後の眠気や身体のだるさにつながります。

飲むタイミングが遅い
薬を服用する時間が遅すぎることも、起床時に眠気が残る原因となります。睡眠薬は、寝る直前に飲むのが基本です。 しかし、寝床に入ってもなかなか眠れず、日付が変わった深夜に服用するといったケースがみられます。
作用時間が短いタイプの薬でも、成分が身体から抜けるまでには6~7時間ほど必要な薬もあります。 そのため、深夜に飲むと、薬の効き目が抜けずに起床時の強い眠気やふらつきを招きます。 これが、朝起きたときの強い眠気やふらつきといった「持ち越し効果」を招く理由です。
体質・加齢による代謝の違いや低下
薬が体内で分解されるスピードには個人差があり、主に肝臓の働きが関係しています。この働きは体質によって異なるほか、年齢を重ねるにつれて低下していくことがわかっています。
特に高齢者は、薬を分解して体外に排出するまでに時間がかかりやすくなります。そのため、起床時も薬の作用が残り、強い眠気やふらつきといった症状が現れやすいのです。用法・用量を守って服用していても、若いころより薬が分解されにくい場合があるため、注意が必要です。

睡眠薬の自己判断による減薬・中止は絶対NG
毎日服用している睡眠薬の量を自分の判断で減らしたり、服用をやめたりすることは控えましょう。頓服であっても、量やタイミングを自分の判断で変えないことが大切です。症状が良くなったと感じて急に薬をやめてしまうと、身体に負担がかかり、不調が起きる可能性があります。
特に気を付けたいのが「反跳性不眠(はんちょうせいふみん)」です。睡眠薬の服用を急に中止したとき、薬を飲みはじめる前よりも眠れなくなる現象です。以前よりも眠りにくい状態になることで、再び薬が必要となるケースがあります。
また、薬を急にやめると「離脱症状(りだつしょうじょう)」が現れることもあります。長く薬を飲んでいると身体がその状態に慣れるため、急に薬をやめると身体がうまく対応できなくなります。
その結果、不安感やイライラ、頭痛、吐き気のほか、手の震えや耳鳴り、光がまぶしく感じられるといった症状が出ることがあるのです。重症の場合は意識を失ってけいれんが起きることもあります。
安全に薬を減らしていくには、医師の指導や薬剤師への相談をもとに、数週間から数か月かけて少しずつ調整していく必要があります。
医師や薬剤師に相談して安全な対処を
起床時の眠気やだるさが気になるときは、医師や薬剤師に相談しましょう。
正確な状況を伝えるために、直近2週間の眠りの様子を書き留めた睡眠日誌や、ほかの薬の影響を確認するためのお薬手帳を準備しておくと、適切な対処法を見つける助けになります。

医師や薬剤師への伝え方のポイントと例
- どのような体調の変化が、どのくらい強く出ているかを詳しく伝える
・朝起きても眠気が続く
・ふらついて転びそうになった
・頭が重い - 症状や体調の変化が、どのようなタイミングやきっかけで生じているか伝える
・薬を飲みはじめてすぐ
・最近急に症状が出るようになった - 薬を飲んだ正確な時刻と、翌朝起きた時刻を伝える
・夜11時に薬を飲んで、朝7時に起きた
・いつもより遅く飲んだ日に症状が強く出た - 仕事の集中力、車の運転、家事など、日常生活にどのような影響が出ているかを具体的に伝える
・仕事中に集中できない
・運転中にぼんやりして危なかった - 寝つきの良さや夜中に目が覚める回数など、薬を飲んだあとの眠りの質について伝える
・夜はぐっすり眠れている
・薬を飲んでもなかなか寝つけない
持ち越し効果の改善には、いまの症状や生活リズム、睡眠の状態などを医師や薬剤師に詳しく伝えることが大切です。
それらの情報をもとに、薬の量や種類の調整、服用タイミングの提案をするため、ささいな変化も記録して相談しましょう。
正しい飲み方で朝をスッキリ迎えよう
睡眠薬を飲むと、スッキリ起きられないという悩みは、決して珍しいことではありません。
自分の判断で薬の量を調整したり、服用をやめたりせず、まずは医師や薬剤師に相談してください。
症状や悩みを具体的に伝えて、薬の量や種類、飲むタイミングなどを調整することで改善が期待できます。
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参考文献・資料
記事監修
石黒 貴子
薬剤師/薬剤師歴27年











