うつ病に漢方薬は効く?抗うつ剤との違い・併用について

うつ病の治療は、休養やカウンセリング(精神療法)に加え、薬による治療が欠かせません。抗うつ剤などの西洋薬が治療の中心となりますが、薬が合わない場合や、心と身体の両面を整えていきたい場合に、漢方薬が用いられることがあります。
今回は、うつ病の治療に用いられる代表的な漢方薬のご紹介と、漢方薬を取り入れるメリットや注意点についても解説します。

うつ病治療に漢方薬が使われる理由とは?

うつ病の治療では、休養やカウンセリング(精神療法)といった環境や心のケアに加え、薬による治療がとても大切です。うつ病は脳内の神経細胞同士の情報伝達にトラブルが生じている状態と考えられており、その治療の中心となるのが、抗うつ剤などの西洋薬です。

抗うつ剤は、セロトニンなど、気分や意欲などの感情にかかわる情報を伝える神経伝達物質に作用し、つらい症状を直接やわらげる効果があります。

一方、抗うつ剤などの副作用がつらく体質に合わない場合や、薬の量を少しずつ減らしていきたい、検査では大きな異常はないのに、なんとなく心身の不調が続くといった悩みに対して、抗うつ剤などに加えて、漢方薬を組み合わせることもあります。

漢方医学には、心と身体はつながっていて、お互いに影響し合うという「心身一如(しんしんいちにょ)」の考え方があります。特定の症状だけを見るのではなく、体力や体質の乱れを整えることで、心の健やかさを取り戻していくアプローチが特徴です。

このように、体質の面からも支えていく漢方治療は、うつ病治療におけるもうひとつの選択肢として用いられています。

うつ病の治療によく使われる代表的な漢方薬

漢方薬は「うつ病」という病名だけで決めるのではなく、一人ひとりの症状や体質に合わせて、最適な処方が選ばれるのが大きな特徴です。

漢方薬 主な症状
  • 半夏厚朴湯
    (はんげこうぼくとう)
  • のどの奥にものが詰まったような違和感がある
  • 気分の落ち込みや動悸(どうき)・不安感が続く
  • ストレスの影響で胃の調子も崩れやすい
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯
    (さいこかりゅうこつぼれいとう)
  • 強いストレスや不安が続いて眠れない
  • イライラしやすい
  • 高血圧に伴う動悸や不安が出やすい
  • 桂枝加竜骨牡蛎湯
    (けいしかりゅうこつぼれいとう)
  • イライラして眠れない
  • 疲れやすい
  • ささいなことが気になって不安になりやすい
  • 補中益気湯
    (ほちゅうえっきとう)
  • 気力や体力、食欲が落ちた
  • だるさや手足の重さがある
  • かぜが長引いたり回復に時間がかかりやすい
  • 加味帰脾湯
    (かみきひとう)
  • 体力が弱く、心身が疲れやすい傾向がある
  • 血色が悪い
  • 貧血や不眠、精神的な不安が出やすい
  • 寝汗や微熱、ほてりを感じることがある
  • 加味逍遙散
    (かみしょうようさん)
  • 疲れやすく、イライラしやすい傾向がある
  • 気分が不安定で眠れない
  • のぼせ感や肩こりが出やすい
  • 抑肝散
    (よくかんさん)
  • 目がさえて寝つきにくい
  • イライラしやすく、怒りっぽさを感じる
  • 眠りが浅く、歯ぎしりが気になる

うつ病を漢方薬で治療するメリット

うつ病の治療に漢方薬を取り入れることには、いくつかのメリットがあります。

心身両面からのアプローチができる

うつ病の方の中には、気分の落ち込みや意欲の低下といった心の症状だけでなく、頭痛、めまい、手足の冷え、胃腸の不調などの身体の症状に悩まされる方も少なくありません。

漢方医学では心と身体を分けずに考えます。例えば、ストレスによる気分の浮き沈みとともに頭痛や肩こりなどがある方には、それら心身の症状を一緒にやわらげる効果が期待できる漢方薬を用いることがあります。

このように、心と身体の両面にまたがる症状に対して、同時にアプローチできることは、うつ病治療に漢方薬を取り入れる大きなメリットといえます。

不調が起こりにくい体質を目指せる

漢方医学では、「なぜ、この人は不調を起こしやすいのだろう?」という視点から、体質や状態を「証(しょう)」として捉えます。

例えば、エネルギー不足で疲れやすい(気虚)、ストレスで気分や体調が乱れやすい(気滞)といった心と身体の傾向をパターン分けし、その証に合った漢方薬を選んでいきます。そのため、漢方薬では一時的な症状を抑えるだけでなく、不調の原因となっている体質そのものを少しずつ改善していくことを目指します。

抗うつ剤が合わない場合の選択肢になる

抗うつ剤は西洋医学に基づく西洋薬に分類されるうつ病治療の柱ですが、眠気やだるさ、胃腸の不調などの副作用が強く出てしまう方や、飲み続けても効果を実感しにくい方もいます。そうした場合、漢方薬は抗うつ剤の代わりとして、あるいは補助的な選択肢として併用されることがあります。

実際の治療では、抗うつ剤を基本としながら、体質や不眠や冷え、胃腸の不調などの個々の症状に応じて漢方薬を組み合わせる方法がとられます。

どの薬を中心にするか、どのように組み合わせていくかは、主治医と相談しながら決めることが大切です。自己判断で抗うつ剤を減らしたり中止したりするのは、症状の悪化につながる可能性があるため控えましょう。

うつ病を漢方薬で治療する際に知っておくべき注意点

「漢方薬だから安心」「自然のものだから副作用は少ない」と思われがちですが、漢方薬も薬であり、使用には注意点があります。

抗うつ剤との併用について

抗うつ剤を服用している方が漢方薬を併用する場合、飲み合わせによっては相互作用で副作用が強く出てしまったり、効果が弱まったりすることがあります。

中でも甘草(かんぞう)は多くの漢方薬に含まれる生薬で、甘草を含む漢方薬と一部の西洋薬を一緒に服用した場合や、甘草を含む漢方薬を重ねて服用した場合、血圧上昇やむくみなどの副作用が出やすくなることが知られています。

そのため、「市販薬だから安心」「なんとなく良さそう」といった、自己判断で漢方薬を飲むことは避けてください。うつ病治療中に漢方薬を取り入れたい場合は、主治医や薬剤師に、現在服用している薬の内容を伝えたうえで、飲み合わせや用量について必ず相談しましょう。

保険適用について

漢方薬のすべてが健康保険の適用対象ではない点も、あらかじめ知っておきましょう。医師が診察したうえで、「治療に必要」と判断して処方する医療用漢方製剤は、ほかの処方薬と同様に健康保険が適用されます。一方で、薬局やドラッグストアで購入できる一般用漢方薬(OTC医薬品)は保険適用外のため、費用は全額自己負担となります。

ひとりで悩まず、相談という一歩を

うつ病治療は継続が重要ですが、自己判断での服薬調整や市販の漢方薬の併用は、飲み合わせによる相互作用の危険があります。効果や副作用に不安があるときはひとりで抱え込まず、医師や薬剤師に相談しながら治療を進めていきましょう。 

服薬履歴や副作用を記録しておくと、相談がスムーズになり、飲み合わせのリスク回避にも役立ちます。お薬手帳を活用し、日々の記録を習慣にしましょう。

薬の管理には、公式アプリ「いつでもアイン薬局」の「お薬手帳」が便利です。アラーム機能で飲み忘れを防げるほか、いま飲んでいる薬がひと目で確認でき、家族の薬もまとめて管理できます。

さらに、「安心お薬サポート」では、チャットやビデオ通話を使って薬剤師に気軽に相談できます。薬局まで足を運ばなくても、処方歴などの情報に基づいて、一人ひとりに合ったサポートを受けられるので、とても便利です。ぜひ、ご活用ください。

※ ご利用には「アイン薬局とつなぐ」のご登録が必要です。

参考文献・資料

記事監修

野原 弘義

精神科医/産業医

2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。

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