夏場は要注意!間違いやすい脳梗塞と熱中症の違い

毎日の厳しい暑さで、めまいや立ちくらみ、頭痛など、体調がすぐれないことはありませんか?

夏場は、脱水や疲れが重なり「熱中症」だけでなく、「脳梗塞」のリスクも高まります。どちらも初期症状が似ており、「ただの熱中症だと思っていたら、実は脳梗塞だった」というケースも少なくありません。

今回は、脳梗塞と熱中症の違いや救急車を呼ぶ判断基準、予防法などをご紹介します。

夏場の脳梗塞と熱中症はなぜ間違えやすい?

夏場の「脳梗塞」と「熱中症」は、どちらも水分不足(脱水)が引き金となって発症します。以下に挙げるような初期症状も似ており、判別が難しいのが実状です。

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 頭痛
  • 意識がぼんやりする

暑さが厳しい時季は「きっと熱中症だろう」と自己判断で対処してしまい、結果的に脳梗塞の発見が遅れてしまうケースも少なくありません。

脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が止まり、脳の細胞が傷ついてしまう病気です。血流が止まっている時間が長ければ長いほど細胞へのダメージが広がってしまうため、一刻も早く病院を受診して、詰まり(血栓)を取り除く治療が必要です。

また、脳梗塞は1年をとおして注意が必要ですが、特に夏と冬は発症リスクが高まります。夏は脱水によって血管が詰まりやすく、冬は寒さによる血管の収縮で血圧が急上昇するためです。

夏場は、大量の発汗によって体内の水分が失われると、血液の粘度が高くなり、ドロドロになってしまいます。その結果、血流が滞って血管に血栓が生じる、いわゆる「夏血栓」が起こりやすくなるのです。
この血栓が脳の血管に詰まることで、脳梗塞が引き起こされます。

脳梗塞と熱中症の違いは?

脳梗塞と熱中症には、主に以下のような違いがあります。それぞれの違いを理解しておくことで、適切な対処や重症化を防ぐことにつながります。

脳梗塞と熱中症の違い
  脳梗塞 熱中症
体温
  • 平熱のことが多い
  • 高くなることが多い
発汗
  • 急に冷や汗が出ることもある
  • 大量の汗をかく
しびれ

麻痺
  • 片側の手足や顔に出るケースが多い
  • 全身にしびれや筋肉の硬直が出るケースが多い
会話・意識
  • ろれつが回らない
  • 言葉が出ない
  • 相手の話を理解できない
  • 軽症:会話ができる
  • 中等症:集中力や判断力が落ちる
  • 重症:呼びかけへの反応が薄くなり、意識を失うこともある

脳梗塞は、主に身体の片側の麻痺や会話・意識障害などの神経症状が出るのが特徴です。対して熱中症は、高体温や大量の発汗、全身のしびれが先行しやすく、重症化すると会話にも影響が出ます。

ただし、高齢者は暑さを感じにくく、体温調節や発汗機能が低下している場合もあるため、熱中症になっていても高熱が出ない、また汗をかかないケースがあります。
汗や体温だけでなく、表情がうつろでないか、手足の動きが不自然でないかなど、全身状態を十分観察しましょう。

なお、脳梗塞の疑いがあるかどうかを判断するには、「顔のゆがみ」「腕の麻痺」「言葉の障害」を確認する「FAST」チェックを覚えておくと安心です。 

脳梗塞の疑いを判断する「FAST」チェック

  • F(Face/顔):口角が片方だけ下がっているか?
    「イー」と口角を上げたとき、片方だけ下がったり、ゆがんだりしていないか
  • A(Arm/腕):片側の腕に力が入らないか?
    「前へならえ」のように両腕をまっすぐ上げたときに、片方の腕だけ無意識に下がってこないか
  • S(Speech/言葉):ろれつが回らない、言葉が出ない、言葉が理解できないなどの症状があるか?
    自分の名前や「今日は良い天気です」などの短い文章をいつもどおり言えるか
  • T(Time/時間):発症時刻はいつか?
    発症時刻の確認と、1つでも症状があればすぐに救急車を呼ぶ

脳梗塞の疑いを判断する
「FAST」チェック

  • F(Face/顔):口角が片方だけ下がっているか?
    「イー」と口角を上げたとき、片方だけ下がったり、ゆがんだりしていないか
  • A(Arm/腕):片側の腕に力が入らないか?
    「前へならえ」のように両腕をまっすぐ上げたときに、片方の腕だけ無意識に下がってこないか
  • S(Speech/言葉):ろれつが回らない、言葉が出ない、言葉が理解できないなどの症状があるか?
    自分の名前や「今日は良い天気です」などの短い文章をいつもどおり言えるか
  • T(Time/時間):発症時刻はいつか?
    発症時刻の確認と、1つでも症状があればすぐに救急車を呼ぶ

そのほか、突然の激しい頭痛や声のかすれ、めまい、吐き気、意識がぼんやりするなどの症状が現れることもあります。少しでも様子がおかしい場合は、迷わず医療機関へ搬送しましょう。

症状が短時間で消えても要注意!

数分から数十分で症状が治まった場合、「すぐに良くなったから軽い熱中症だったのだろう」と自己判断するのは危険です。なぜなら、脳梗塞のような症状が一時的に現れ、通常24時間以内に治まる「一過性脳虚血発作(TIA)」を起こしている可能性があるためです。

一過性脳虚血発作は、いわば脳梗塞の一歩手前のサインであり、脳の血流が一時的に悪くなることで起こります。そのまま放置してしまうと、本格的な脳梗塞へと進行するリスクが高まります。

「すぐに治ったから大丈夫」と安易に判断せず、気になる症状が一時的にでも現れた場合は、必ず医療機関を受診してください。

救急車を呼ぶ判断基準と注意点

脳梗塞の疑いや熱中症が重症化している場合は、ためらわずに救急車を呼び、医療機関で治療を受ける必要があります。「どのような状態なら救急車を呼ぶべきか」という基準や注意点を知っておくことが、早期回復や後遺症の軽減につながります。

いますぐ救急車を呼ぶべき状態

以下は、脳梗塞、もしくは医療機関での治療が必要な中等症以上の熱中症の代表的な症状です。判断が難しい場合でも、これらに該当する症状がみられた際は、すぐに救急車を呼びましょう。

  • 片側の手足の麻痺・しびれ、筋肉の硬直やけいれんなどがある
  • 意識がない、または呼びかけへの反応がおかしい
  • 脱水症状があり、自力で水が飲めない
  • 体温が高く、涼しい場所で休ませても症状が改善しない

また、脳梗塞の場合、発症からの経過時間によって治療内容が異なります。例えば、点滴で血栓を溶かす治療は発症後4.5時間以内、カテーテルで直接血栓を取り除く治療は6時間以内(状況によっては24時間)の開始が目安とされています。
どちらの治療も、早く開始することで回復が期待できます。

気になる症状が現れた時刻はメモをしておき、救急隊や医師へ正確に伝えられるようにしておきましょう。

脳梗塞が疑われるときの注意点と対処法

脳梗塞が疑われ、救急車を待つ間は、以下のポイントに注意して対処してください。良かれと思ってしたことが、かえって症状を悪化させてしまう場合があります。

  • 無理に水分を飲ませない
    脳梗塞では飲み込む力(嚥下機能:えんげきのう)が低下している場合が多く、水分が誤って気管に入ると窒息や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の原因になります。
  • 安静な姿勢を保つ
    むやみに身体を動かさず、本人の安全や呼吸の確保など最小限にとどめ、楽な姿勢をとらせます。
  • 体温と衣服の調節
    衣服をゆるめて呼吸を楽にします。夏場は涼しい場所へ移動させ、首のまわり、脇の下、太ももの付け根などを冷たいペットボトルや氷のうで冷やしましょう。

特に水分補給は、脳梗塞や熱中症の予防に欠かせません。しかし、発症後は、無理に摂取させると深刻な事態を招く恐れがあります。
意識がはっきりせず、脳梗塞か熱中症か判断がつかない場合は、口には何も入れず、身体を冷やしながら迅速に医療機関へ搬送しましょう。

夏に脳梗塞や熱中症を防ぐための3つの対策

夏の脳梗塞や熱中症を防ぐためには、ふだんから水分摂取や環境づくりを意識し、体調を整えることが大切です。

こまめに水分や塩分を補給する

水分は喉が渇いたと感じる前に、少しずつこまめに補給しましょう。喉の渇きを感じた時点で、すでに脱水状態になっている場合もあるためです。

また、汗とともに失われる塩分も補給すると良いでしょう。外出時は塩あめや塩分タブレットを携帯したり、日常の食事に梅干しや味噌汁を取り入れたりするのが手軽でおすすめです。たくさん汗をかく場面では、水分と塩分を同時にバランス良く補える経口補水液やスポーツドリンクを活用すると良いでしょう

ただし、アルコール類や、コーヒー・緑茶などのカフェイン含有飲料は、利尿作用があり、水分補給には適しません。摂取した量以上の水分を尿として排泄するため、脱水を悪化させるリスクもあります。アルコールを摂取する際には合間で水分を摂り、日常の水分補給には水や麦茶などのカフェインを含まない飲料を選びましょう。

入浴時や就寝中は水分が失われやすいため、入浴前後や就寝前にコップ一杯の水を飲むと、脱水による脳梗塞や熱中症の予防に効果的です。喉が渇いていなくても、水分を摂るように心がけてみてください。

※高血圧や糖尿病、腎臓病などの持病をお持ちの方は、塩飴や塩分タブレット、経口補水液、スポーツドリンクなどが摂れない場合があります。あらかじめ医師や薬剤師へご相談ください。

暑さを我慢せずにエアコンを使う

部屋の室温や湿度が高いままだと、大量の汗をかき、脱水を引き起こすリスクが高まるため、温湿度計で確認しながらエアコンを使いましょう。
部屋全体の温度が28℃前後になるよう、扇風機なども使って空気を循環させると、温度を均一に保てます。

湿度が高いと汗が蒸発しにくく、身体に熱がこもりやすくなるため、湿度が気になる場合は除湿機能を活用しましょう。同じ室温でも体感温度が下がり、より快適に過ごせます。

また、就寝時に室温が高いままだと、寝ている間の脱水につながるため、我慢せずにエアコンを活用しましょう。「寝付くまで涼しければ良い」と考えず、少なくとも3~4時間、もしくは朝までエアコンをつけて室温を保つことも大切です。

十分な睡眠時間を確保する

睡眠不足は、脳梗塞と熱中症どちらのリスクも高めます。必要な睡眠時間は年齢や体質などによる個人差があるものの、成人の場合およそ6~8時間が良いとされています。また休日の寝だめは、自律神経の乱れや血管の炎症につながり、脳梗塞のリスクを高める恐れがあるため、推奨されません。

毎日十分な睡眠を取り、日々の疲れを残さない生活を送りましょう。

脳梗塞や熱中症のリスクを減らして夏を乗りきろう

脳梗塞と熱中症は、夏場の脱水で起こりやすくなる病気です。
脳梗塞や中等症以上の熱中症の疑いがある場合は、一刻も早い治療が必要となり、特に脳梗塞は、発症からどれだけ早く治療を開始できるかが、その後の回復を左右します。

それぞれの症状や万が一の対処法を理解し、適切な水分補給や生活環境を整えて、安全に夏を乗りきりましょう。

参考文献・資料

記事監修

野原 弘義

精神科医/産業医

2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。

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