深夜に突然足がつってしまう「こむら返り」。
単なる筋肉のトラブルと思われがちですが、生活習慣や病気が原因の場合もあります。
今回は、足がつる原因や日常生活でできる予防法、つってしまったときの対処法に加え、受診が必要となる目安も解説します。
こむら返りとは?
こむら返りとは、主にふくらはぎの筋肉が自分の意思とは関係なく急激に異常収縮し、強い痛みを伴うけいれんが起こる状態です。突然ふくらはぎが硬くなり、刺すような強い痛みで就寝中に目が覚めてしまうことも少なくありません。
症状は数秒から数分続くことが多く、治まったあともしばらく筋肉痛のような違和感や張りが残る場合があります。また、こむら返りは繰り返しやすく、日常生活に支障をきたす恐れもあります。

こむら返りはなぜ起きるの?
こむら返りは、ミネラル不足や脱水、筋肉疲労など日常的な原因だけでなく、糖尿病や下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)などの病気が原因の場合もあります。
そのため、一時的な症状と見過ごさず、原因を知っておくことが大切です。
日常的な原因
こむら返りは、日々の生活習慣や体調のわずかな変化がきっかけで起こります。主な原因として、以下の7つが挙げられます。
- ミネラル不足
カルシウムやマグネシウム、カリウムなどのミネラルは筋肉の収縮と弛緩(しかん)を調整しています。ミネラルが不足すると神経や筋肉の働きが乱れ、筋肉が過剰に収縮しやすくなり、こむら返りが起こりやすくなります。 - 脱水・水分不足
体内の水分が不足すると血液量が減り、筋肉への栄養やミネラル供給が低下します。その結果、筋肉が正常にゆるまず、こむら返りが起きやすくなります。特に、寝ている間の発汗や、アルコール摂取による利尿作用が要因となることがあります。 - 冷え・血行不良
身体が冷えると血管は収縮するため、筋肉への血流が低下します。そのため、酸素や栄養が届きにくくなり、筋肉が収縮して起こる場合があります。 - 筋肉疲労
長時間の立ち仕事や運動などで筋肉を使いすぎると、筋肉中に疲労物質が蓄積します。これにより筋肉の調整機能が低下し、こむら返りが起こりやすい状態になります。 - 筋力の衰え
筋力が低下すると筋肉や神経の連携が上手くいかなくなります。そのため、わずかな刺激による筋肉の異常な収縮が原因にもなります。 - 睡眠中の姿勢
睡眠中の姿勢によっては、筋肉が緊張状態になるため、こむら返りが起こりやすくなるケースがあります。例えば、つま先が伸びた状態などが挙げられます。 - 長時間同じ姿勢を続ける
長時間座っていたり、足を動かさなかったり同じ姿勢が続くと血流が滞るため、むくみが生じ、こむら返りが起こりやすくなります。
こむら返りは体内の環境変化や生活習慣とも関係しています。これらの原因につながる習慣がないか、ふだんの生活を振り返ってみましょう。
病気によるもの
病気が原因の場合、神経や血流、電解質などの乱れによって体内のバランスが崩れ、こむら返りが起こりやすくなります。
- 糖尿病
糖尿病による末梢神経障害や血流障害が生じることで、筋肉をコントロールする神経の働きが低下し、神経の伝達が不安定になります。 - 下肢静脈瘤
足の静脈内に血液がたまって、体内の電解質バランスやエネルギー代謝が乱れ、筋肉の収縮と弛緩の調整機能に支障をきたします。 - 肝硬変
肝機能の低下に伴って、体内の電解質バランスやエネルギー代謝が乱れ、筋肉の収縮と弛緩の調整機能に支障をきたします。 - 甲状腺疾患
ホルモン値の低下によって全身の血液循環が悪化し、筋力の低下とともに筋肉の興奮性が変化してしまいます。 - 慢性腎臓病
腎機能の低下からカリウムやマグネシウムなどの電解質バランスが崩れ、筋肉を正常に動かすための制御が困難になります。 - 閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)
足の動脈が狭まり血流が低下すると、筋肉への酸素や栄養供給が不足して、筋肉が過敏な状態となります。
そのほかの要因として、血液透析や妊娠、薬の副作用がきっかけとなることもあります。血液透析では、透析治療中に体内の水分や電解質が急激に変動するため、筋肉や神経の調整に影響が生じます。
妊娠中は、血液量の増加やホルモンバランスの変化、ミネラル不足などが起こりやすい状態です。特に、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが不足することが多いため、こむら返りが起こりやすくなります。
コレステロールを下げるスタチン系薬や、高血圧などに使用される利尿薬・β遮断薬などの副作用で、こむら返りが起こることもあります。
これらの薬を服用中の方で、こむら返りが気になる場合は、自己判断で中断せずに主治医や薬剤師にご相談ください。
こむら返りの予防はできる?
こむら返りは、日常生活の工夫によって予防することができます。できることから、毎日取り組んでみましょう。
こまめな水分・ミネラル補給をする
こむら返りを防ぐためには、体内の水分とミネラルのバランスを安定させることが重要です。水分が不足すると血流が低下するため、筋肉に必要な栄養や電解質が届きにくくなります。特に、就寝中は発汗により脱水になりやすいため、寝る前にコップ1杯の水分を補給すると良いでしょう。
また、マグネシウムやカリウム、カルシウムなどのミネラルは筋肉の収縮と弛緩を調整する役割を担っています。そのため、これらを多く含む、海藻類、ナッツ類、大豆製品、乳製品、野菜などを積極的に取り入れることも意識しましょう。

身体を温める
身体が冷えると、血管が収縮し血流が悪くなります。加えて、筋肉が緊張するため、こむら返りが起こりやすくなります。そのため、日ごろから身体を冷やさない工夫が大切です。靴下やレッグウォーマーで足元を暖かくしたり、冷房の効きすぎに注意することで血流の低下を防げます。
また、シャワーだけで済ませず、湯船にしっかりつかることで全身の血行が促進され、筋肉の緊張もやわらぎます。特に、就寝の1~2時間前に入浴すると、就寝中のこむら返り予防に効果的です。

疲労回復を徹底する
筋肉に疲労が蓄積すると、筋肉は緊張状態となり、こむら返りが起こりやすくなります。運動や長時間の立ち仕事をした日は、無理をせずしっかりと休息を取りましょう。
また、質の良い睡眠で筋肉や神経の回復を促すとともに、食事面から疲労回復をサポートすることも効果的です。具体的には、筋肉の原料となるタンパク質(肉・魚・卵・大豆製品など)や、筋肉の動きを助けるビタミンB群(豚肉・玄米・納豆など)を意識して日々の食事に取り入れましょう。こうした内側からのケアが、こむら返りの対策・予防につながります。

寝る前のストレッチやマッサージをする
就寝前にストレッチやマッサージを行うことは、ふくらはぎの筋肉の緊張をやわらげ、夜間のこむら返り予防に役立ちます。ストレッチは、筋肉をやわらかく保ち、足がつりにくい状態をつくるとされています。また、マッサージによって血行を促すことも有効です。
ふくらはぎのストレッチ方法
反動はつけず、痛みを感じない範囲で、ゆっくりと伸ばしていきましょう。
- 壁の前に立って両手をつきます。
- 片足を後ろに伸ばし、かかとは床につけたままゆっくりと身体を前に倒します。
- ふくらはぎが心地良く伸びる程度で止めましょう。反対側も同じように伸ばします。

太もも前側のストレッチ方法
痛みが出ない範囲で、自然に伸ばすのがポイントです。
- 床やベッドに座ります。
- 片ひざを曲げ、曲げた方のかかとをお尻に近づけます。
- 太ももの前側が伸びているのを感じながら姿勢を保ちます。

足首のストレッチ方法
呼吸を止めずにリラックスした状態で、痛みが出ない程度にゆっくりと動かしましょう。
- 座った状態で足を伸ばします。
- 足首を手でつかみ、ゆっくり手前に引きます。
- その後、足首をゆっくり円を描くように回します。

あわせて、ふくらはぎを下から上へやさしくさするようにマッサージすると血流が促されます。入浴後など身体が温まっているタイミングで行うと、より効果的です。
こむら返りが起きてしまったら
こむら返りが起きてしまった場合は、慌てず適切に対処することで、痛みをやわらげ、回復を早めることができます。
焦らず足を伸ばす
こむら返りが起きたら、まずは慌てずに硬くなった筋肉をゆっくりと伸ばしましょう。痛みが落ち着くまで、無理のない範囲で行うのがポイントです。
こむら返りが起きてしまった場合の対処法
- 床やベッドの上に座り、つってしまった方の足の膝をまっすぐ伸ばします。
- つま先を手でつかみ、すねの方向(自分の身体の方)へゆっくりと引き寄せます。

つま先に手が届かない場合は、長めのタオルをつま先に引っ掛けて、両手で手前に引っ張るとスムーズに伸ばせます。
芍薬甘草湯を活用する
「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という漢方薬も、こむら返りに有効です。筋肉の急なけいれんをやわらげる働きがあり、応急的な対処法として用いられます。
また、持病がある場合や薬を服用している場合はもちろん、ご自身の体質に合うかどうかも含め、服用前に医師や薬剤師へ相談してください。用法・用量を守って正しく活用することで、こむら返りの痛みをやわらげる手助けになります。
ただし、芍薬甘草湯は、頓服(症状が出たときだけ服用する)での使用が基本です。長期間かつ頻繁に服用すると、むくみや血圧上昇などを引き起こす偽性アルドステロン症が現れることがあります。
こむら返りで病院に行くべきタイミング
こむら返りが一時的で症状が軽いものであれば様子を見ても良いでしょう。しかし、何度も繰り返す場合や、足だけでなく全身の筋肉がつるような症状がある場合は、病気が隠れている可能性があります。
また、しびれや喉の渇き、強いむくみを伴う場合や、歩行時に足の痛みが出る場合も注意が必要です。こうした症状が起きたときは、内科や神経内科、整形外科を受診しましょう。
なかなか治らないこむら返りは受診を
こむら返りの多くは、ミネラル不足や脱水、冷え、疲労などの日常的な要因で起こります。一方で、糖尿病や下肢静脈瘤、慢性腎臓病などの疾患が関与している場合もあります。
頻繁に繰り返す場合や長期間続く場合は注意が必要です。体内バランスの乱れや病気が背景にある可能性があるため、医療機関を受診しましょう。
記事監修
野原 弘義
精神科医/産業医
2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。







