子どもの予期せぬけがは、いつも突然やってくるものです。いざというとき、大人が落ち着いて対応できるかが大切です。あらかじめ応急処置の基本と受診の目安を知っておけば、慌てず対応できます。今回は、家庭で実践できる子どものけがの応急処置についてご紹介します。
子どもによくあるけがの正しい応急処置
子どものけがは、種類や程度によって必要な手当てが異なります。適切な応急処置を行うことは、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることにつながります。
すり傷や切り傷
転んですり傷や切り傷ができたときは、すぐに消毒液を使用するのではなく、まずきれいな水で傷口を十分に洗い流すことが大切です。泥や砂、目に見えない細菌を落とすことで、感染予防につながります。
- 水道の水で傷口の汚れをきれいに洗い流す
- 清潔な布やガーゼで傷口を直接押さえて出血を止める
- 傷口を保護するために絆創膏を貼る
泥や砂が付いたまま絆創膏(ばんそうこう)を貼ると、細菌が繁殖して化膿しやすくなります。
また、消毒液の使いすぎは、傷を治す細胞まで壊して回復を遅らせるため注意が必要です。脱脂綿で強く拭くことも、繊維が残ったり傷口を刺激するため避けましょう。
傷口が深く開いている場合や、水で洗っても砂や汚れが取り切れないときは、無理に処置を続けず医療機関を受診してください。
泥や砂が付いたまま絆創膏(ばんそうこう)を貼ると、細菌が繁殖して化膿しやすくなります。
また、消毒液の使いすぎは、傷を治す細胞まで壊して回復を遅らせるため注意が必要です。脱脂綿で強く拭くことも、繊維が残ったり傷口を刺激するため避けましょう。
傷口が深く開いている場合や、水で洗っても砂や汚れが取り切れないときは、無理に処置を続けず医療機関を受診してください。

頭をぶつけた
頭のけがは直後に異常がなくても、あとから状態が変わることがあります。そのため、けがをしてから24時間は慎重な観察が必要です。ふだん通りの様子で意識がはっきりしており、食事や睡眠も変わった様子がなければ、そのまま安静に過ごしましょう。たんこぶができている場合は、冷たいタオルなどで冷やしてください。
ただし、次のような様子がみられる場合は、すぐに医療機関の受診や救急要請をしましょう。
救急車を呼ぶサイン
- 意識がない、または呼びかけに対して反応が鈍く、ぼんやりしている
- おう吐を繰り返す
- ひきつけ(けいれん)を起こしている
- 手足の動きがいつもと違う
- 視線が合わない
- 鼻や耳から血や透明な液体が出ている
症状が落ち着いているように見えても、翌日までは激しい運動や遊びは控え、注意深く様子を見守ることが大切です。
捻挫・打撲・骨折
手足を強くぶつけたりひねったりした際は、腫れや痛みをやわらげるための「RICE(ライス)」処置を速やかに行うことが大切です。
-
安静(Rest)
けがをした部分を無理に動かさないよう保護する -
冷却(Ice)
冷たいタオルや氷で冷やし、痛みと腫れをやわらげる -
圧迫(Compression)
腫れが広がるのを防ぐため、包帯などで適度に圧迫する -
挙上(Elevation)
けがをした部分を心臓より高い位置に保つ
見た目で明らかに形が変わっている場合や、強い痛みでほとんど動かせないときは、骨が折れている可能性があります。その場合は患部を無理に触らず、板や雑誌などで固定し、すぐに整形外科を受診してください。
動物にかまれた傷
動物にかまれたときに最も注意すべき点は、動物の口腔内細菌による感染のリスクです。歯が深く刺さった場合、表面の傷が小さくても皮膚の深い部分で菌が繁殖するリスクがあります。特に猫の歯は細く鋭いため、一見すると軽症に見える小さな傷であっても注意が必要です。
応急処置は、まず流水で傷口を十分に洗い流します。汚れや菌を洗い流す前に消毒液を使用すると、傷口の組織を傷め、かえって回復を遅らせる恐れがあります。
- 大量の流水と刺激の少ない石けんで、傷口をきれいに洗い流す
- 出血している場合は、清潔なガーゼなどで傷口を強く押さえて血を止める
- 腫れがあるときは、冷たいタオルや保冷剤で傷口周辺を冷やす
また、かまれたあとに症状や体調が急変する場合があるため、応急処置のあとは速やかに医療機関を受診してください。その際、過去の予防接種記録を確認できるよう、母子手帳を持参しましょう。
やけど
やけどは、直後にどれだけ早く、長く冷やせるかによって皮膚へのダメージの深さが変わります。また、しっかり冷やすことは、痛みを抑えることにもつながります。
- すぐに冷たい流水で10~20分以上冷やす
- 服の上から熱湯などがかかったときは、無理に脱がさず、服の上からそのまま冷やす
- 流水が近くにないときは、バケツなどに水をため、やけどした部分を浸す
応急処置の際、水ぶくれをつぶすと細菌に感染するリスクが高まるため、なるべく触れずに保護するようにしましょう。また、アロエや市販の塗り薬、冷却シートなどは、皮膚への刺激となり症状を悪化させる恐れがあるため、自己判断での使用は避けましょう。
やけどの範囲が広い場合や、顔や頭のやけど、皮膚が白っぽくなっているときは重症の可能性があります。患部を冷やしながら、すぐに医療機関を受診するか救急車を呼びましょう。
鼻血
子どもの鼻の内側の粘膜は非常に薄くデリケートなため、指で触るなどのわずかな刺激でも、出血しやすい特徴があります。鼻血が出たときは、落ち着いて以下の手順で対応してください。
- 椅子に座らせ、頭を少し前かがみにする
- 小鼻(鼻の穴の左右外側に膨らんだ部分)を、指でしっかりとつまむ
- そのまま指を離さずに5~10分ほど押さえ続ける
- 喉に流れてきた血は飲み込まずに吐き出させる
なお、顔を上に向けたり寝かせたりすると血を飲み込みやすく、吐き気やおう吐を招く恐れがあります。また、首の後ろを叩くのも止血にはつながらないため、正しい方法で鼻を押さえて血を止めましょう。
子どもがけがをしたときの救急受診の目安
家庭で処置をして様子を見るか、病院へ行くべきか、どちらが良いか悩むときは、まず子どもの全身の状態をくまなく確認しましょう。以下のような症状がみられる場合は、すぐに病院へ行くか、救急車を呼んでください。
受診のサイン
- 呼びかけに反応しない、または意識がはっきりしない
- ひきつけ(けいれん)を起こした
- 何度も吐く、または強い頭痛がある
- 出血がひどく、傷口を押さえても止まらない
- 呼吸が苦しそうで、顔色が青白い
これらのサインに当てはまらなくても、「いつもと様子が違う」と不安に感じる場合は、すぐに病院を受診するか救急車を呼びましょう。
夜間や休日の相談先として、小児科医や看護師から電話でアドバイスを受けられる「子ども医療電話相談(#8000)」があります。また、日本小児科学会が提供しているウェブサイト「こどもの救急」では、夜間や休日などの診療時間外に病院へ行くべきかどうかの目安を症状ごとに調べることができます。

応急処置の正しい知識でいざというときに備えよう
子どものけがに備えて、状況に応じた正しい応急処置を知っておくことが大切です。
また、夜間や休日でも落ち着いて対応できるよう、相談窓口やウェブサイトも押さえておきましょう。
参考文献・資料
記事監修
野原 弘義
精神科医/産業医
2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。







