アトピー性皮膚炎の症状が落ち着いていたはずなのに、ある日突然、赤みやかゆみが強くなった経験はありませんか?症状の急な悪化は、複数の要因が重なって起こり、自己流のケアを続けると、より一層症状を悪化させてしまうこともあります。
今回は、アトピー性皮膚炎が急に悪化する主な原因や、日常生活での注意点も踏まえた対処法を詳しく解説します。
アトピー性皮膚炎が急に悪化する要因と注意したいポイント
アトピー性皮膚炎が急に悪化する背景には、いくつかの共通した要因があります。ひとつの原因だけでなく、日々のケアや生活の中での小さな変化が重なって、症状が悪化することも少なくありません。
薬の使用をやめてしまう
アトピー性皮膚炎が急に悪化する原因として多いのが、薬の使用を自己判断で中断してしまうことです。見た目が改善していても、肉眼では確認できない炎症が皮膚内に残っていることがあり、中断によって症状のぶり返しや悪化につながることがあります。
薬の中断や使い方による悪化を防ぐために、次のポイントに注意しましょう。
- 赤みやかゆみが落ち着いても、自己判断で薬をやめない
- 症状の変化を感じたときほど、使用量や使用頻度を独断で変えない
- 不安や迷いがある場合は、早めに医師や薬剤師に相談する
症状が軽くなったり、見た目が良くなったりしても、薬の使用は自己判断で中断せず、症状に応じて医師と相談しながら治療を進めていくことが、悪化を防ぐポイントです。
外部からの刺激
アトピー性皮膚炎の急な悪化には、外部からの刺激が関係しているケースも少なくありません。具体的には2つの刺激が影響を及ぼします。
① 季節の変化による刺激
季節の変化によって、皮膚を取り巻く環境は大きく変わります。夏は汗をかきやすく皮膚が蒸れやすいため、皮膚の常在菌や真菌(カビ)が増えやすい状態になります。
冬から春にかけては、空気が乾燥しやすく、皮膚のバリア機能が低下することで、ダニや花粉、ホコリなどの刺激を受けやすくなります。このような季節特有の刺激は、生活スタイルを特に変えていなくても、急な悪化につながります。

季節の変化による症状の悪化を防ぐために、次のポイントに注意しましょう。
- 汗をかいたままにせず、できるだけ早めにやさしく拭き取る
- 汗や皮脂が気になる場合は、必要に応じてシャワーなどで洗い流す
- 空気が乾燥する時季は、入浴後などに保湿を習慣づける
- 花粉やホコリが多い時季は、皮膚への付着を減らす工夫をする
② 生活環境による刺激
日常生活の中にも、皮膚にとって刺激になるものがあります。洗剤や柔軟剤、衣類の素材、金属製品など、毎日何気なく使っているものが、知らないうちに皮膚への負担になっていることがあるのです。
特にアトピー性皮膚炎を発症していると皮膚は刺激を受けやすく、わずかな刺激でも、症状の悪化につながる場合があります。
生活環境による刺激で悪化を防ぐために、次のポイントに注意しましょう。
- 洗剤や柔軟剤は、香りや刺激の少ないものを選ぶ
- 肌に直接触れる衣類は、綿など刺激の少ない素材を選ぶ
- 金属製品やアクセサリーが、同じ場所に長時間触れ続けないようにする
外部からの刺激を完全に防ぐことは難しいため、できる限り刺激を抑えて、肌に残さないことが大切です。
ストレスや生活習慣の乱れ
ストレスや生活習慣の乱れも、アトピー性皮膚炎の急な悪化に深く関係しています。特に影響を受けやすいのは、次の3つです。
① ストレス

② 睡眠不足・疲労
睡眠中は、日中に受けた刺激やダメージを修復し、皮膚の状態を整える大切な時間です。しかし、睡眠不足や疲労が重なると、この回復が十分に行われにくくなります。その結果、皮膚の保水力が弱まり、乾燥しやすい状態が続きます。
乾燥した皮膚は刺激に対して敏感になり、わずかな汗や衣類の摩擦でも、かゆみや赤みが悪化しやすくなります。
③ 食生活の乱れ
アルコールや香辛料などの刺激の強い食品には、血行を促進する作用があります。血流が急に良くなると、皮膚の中にある炎症が刺激され、かゆみを感じることがあります。
ストレスや生活習慣の乱れによる悪化を防ぐために、次のポイントに注意しましょう。
- ストレスを感じているときは、無意識に肌を触ったり、かいたりしやすいため、我慢せず外用薬や保湿で皮膚を落ち着かせる
- 「最近忙しい」「体調が崩れている」と感じるときは、悪化しやすいタイミングであることを前提にケアを行う
- 睡眠不足や疲労が続いていると感じた場合は、症状が悪化する前に、十分な睡眠時間を確保して皮膚の回復を優先する
- 夜間のかゆみが強いときは、入浴後の保湿や室温・湿度など、睡眠環境を見直す
- アルコールや香辛料を摂ったあとにかゆみが強くなる場合は、症状が落ち着くまで控え、頻度や量を抑える
生活習慣をすべて完璧に整えることは難しくても、皮膚への負担を減らす意識を重ねることが、症状の安定につながります。
スキンケアの方法を変えた
アトピー性皮膚炎において、スキンケアの方法や製品を変えたことが症状悪化の原因となることがあります。
化粧水や乳液、日焼け止めなどを新しい製品に切り替えたあと、かゆみや赤みが増したことはないでしょうか。これは、見た目が落ち着いていても皮膚のバリア機能が完全に回復していないためです。
また、「敏感肌用」「低刺激」「オーガニック」と表示された製品でも、植物由来成分や香料、防腐剤が肌質によっては刺激となる恐れがあります。
さらに、保湿を重要視するあまり、複数の製品を重ね塗りしたり、強く塗り込んだりすることも皮膚への負担となり、症状悪化を招く要因となります。したがって、肌質に合った製品選びはもちろん、肌に負担をかけない塗り方を見直すことも欠かせません。
スキンケアによる悪化を防ぐために、次のポイントに注意しましょう。
- 新しいスキンケア製品を、一度に複数試さない
- 「敏感肌用」と表示されていても、まずは腕の内側などで少量、試してから顔に使用する
- 塗るときはこすらず、やさしく押さえるようになじませる
- 赤みやかゆみが出た場合は、使用を控えて様子をみる
- スキンケア方法や製品を変えたあとに症状の悪化を感じたら、医師や薬剤師に相談する
関連記事
アトピー性皮膚炎が悪化したらすべきこと
アトピー性皮膚炎の症状が急に悪化すると、できるだけ早く治したいと思い、自己流のケアを試してしまうこともあるかもしれません。
しかし、状態を十分に確認しないまま対処を続けると、皮膚に余計な負担がかかり、かえって症状が長引いてしまうことがあります。悪化したときこそ大切なのは、いまの皮膚の状態を正しく見極め、その状態に適した対応をとることです。
まずは医療機関を受診する
症状が急に悪化したときは、まず医療機関を受診することが大切です。赤みやかゆみの悪化が、必ずしもアトピー性皮膚炎による炎症とは限らず、細菌やウイルスなどの感染症が関係している場合もあります。
特に、黄色いかさぶたや小さな水ぶくれが急に増えた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
そのほか、見た目だけでは判断が難しいケースもあり、自己判断でケアを続けてしまうと、症状が広がったり、治りにくくなったりすることがあります。
医師の診察を受けることで、以下の内容を正確に確認できます。

- 現在起きている症状の原因
- 感染症の有無
- いまの皮膚の状態に適した治療方針
炎症をしっかり抑え込む
アトピー性皮膚炎が悪化しているときは、皮膚の炎症を十分に抑えることが重要です。医師の診察で細菌などの感染がないことが確認できれば、ステロイド外用薬などの抗炎症薬を使い、医師の指示通りに治療を進めるのが基本となります。
炎症が十分に抑えられない状態が続くと、かゆみが長引きやすくなったり、無意識に皮膚をかいてしまったりして、皮膚のバリア機能がさらに低下することがあります。こうした悪循環に陥ると、なかなか症状が改善しません。

再発を予防する治療法を行う
アトピー性皮膚炎は、症状がいったん落ち着いても、治療を急にやめてしまうと再発しやすいという特徴があります。そのため、炎症が治まったあとも、皮膚の状態を安定させるための治療を続けることが大切です。
このような場合に行われるのが、薬の使用間隔を空けながら継続する「プロアクティブ療法」です。毎日使用していた薬を急に中断するのではなく、週に2〜3回など、間隔を空けて塗り続ける方法です。
この治療は、目に見えない炎症を抑え続けることで、皮膚のバリア機能の回復を促します。その結果、症状の再発を防ぎ、健やかな肌状態を安定して維持できるようになります。
症状の再発を繰り返すと、皮膚へのダメージが蓄積し、治療がより困難になる場合があります。医師と相談しながら、自分に合った治療を継続することが、アトピー性皮膚炎と上手に付き合っていくために必要です。
アトピー性皮膚炎の急な悪化は身体からのSOS
アトピー性皮膚炎の急な悪化は、治療の中止や外部からの刺激、疲労などさまざまな要因が重なった「身体からのSOS」です。自己判断は避け、まずは医療機関で皮膚の状態を確認しましょう。
日々の生活習慣を見直して、「悪化しにくい状態」を保つケアと適切な治療を続けることが大切です。
参考文献・資料
記事監修
野原 弘義
精神科医/産業医
2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。







