糖尿病の治療薬ってどんなもの?種類や特徴、副作用をまとめて解説

糖尿病と診断されると「薬は一生飲み続けないといけないの?」「飲むタイミングを間違えたらどうしよう」と不安になる方も多いのではないでしょうか。糖尿病の治療薬は種類が多く、作用もさまざまです。今回は、糖尿病治療薬の目的や種類に加え、代表的な薬の特徴や副作用などをご紹介します。

糖尿病治療の目的を知っておこう

糖尿病治療の目的は、血糖値や身体の代謝状態を良好に保ち、合併症を防ぎながら健康な生活を長く続けることです。糖尿病が進行すると、目や腎臓の不調、手足のしびれ、さらには心臓や脳に関わる合併症のリスクが高まります。しかし、早期から治療に取り組むことで、健康な人と変わらない寿命や生活の質を目指すことができます。

また、薬は一度はじめると一生やめられないと思われがちですが、必ずしもそうではありません。食事療法や運動療法とあわせて血糖コントロールが改善した場合には、医師の判断のもとで治療薬の減量や中断が検討されることもあります。

一方で、できるだけ薬を使いたくないと治療を先延ばしにすると、高い血糖値を放置することになり、かえって合併症の進行を早める原因となります。その結果、薬の種類や量が増え、治療の負担がさらに大きくなってしまうことも少なくありません。合併症を防ぎ将来の負担を減らすため、早期の治療開始が重要です。

糖尿病治療薬の種類

糖尿病の治療薬は、「インスリン※1を出しやすくする」「インスリンを効きやすくする」「糖の吸収・排泄を調整する」という3つの働きに分けられます。患者さまの体質(インスリンが出にくい・効きにくいなど)や生活背景に合わせて薬を組み合わせ、血糖値のコントロールを行います。

※1 すい臓から分泌され、血液中の糖(ブドウ糖)を細胞の中に取り込んでエネルギーとして利用できるように促し、血糖値を一定に保つ役割を持ちます。

糖尿病の治療薬の種類

※横にスクロールできます。

主な作用 薬の種類 特徴
インスリンを
出しやすくする
DPP-4阻害薬
  • 血糖値が高いときだけインスリン分泌を促す
  • 血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)の分泌を抑制する
スルホニル尿素薬
  • すい臓を直接刺激してインスリンの分泌を促す
速効型インスリン分泌促進薬
  • 服用後、短時間でインスリン分泌を促す
GLP-1受容体作動薬
GIP/GLP-1受容体作動薬
  • 血糖値が高いときだけ食後のインスリン分泌を促す
  • グルカゴンの分泌を抑制する
インスリンを
効きやすくする
ビグアナイド薬
  • 肝臓での糖の生成を抑える
  • 筋肉や小腸、脂肪組織に働いてインスリンを効きやすくする
チアゾリジン薬
  • 筋肉や肝臓、脂肪組織などでインスリンを効きやすくする
イメグリミン薬
  • 肝臓や筋肉に働きかけ、インスリンを効きやすくする
  • ミトコンドリアを通じて血糖値が高いときだけインスリン分泌を促す
糖の吸収・排泄を
調整する
α-グルコシダーゼ阻害薬
  • 小腸で糖の分解・吸収をゆるやかにする
SGLT2阻害薬
  • 腎臓で糖が再び取り込まれるのを抑え、尿中に余分な糖を出して体外へ排出する

治療薬は、身体の状態や合併症の有無などを考慮して選択されるため、医師と相談しながら治療を続けていくことが大切です。

糖尿病治療薬の飲み薬と注射の違い

糖尿病治療薬には、飲み薬(経口薬)と注射薬の2種類があります。飲み薬は消化管から吸収されて作用し、注射薬は皮下に投与して直接体内で働きます。それぞれ作用の仕方や使い方が異なるため、血糖値や合併症の有無、生活習慣、治療目標などを踏まえて薬が選択されます。同じ糖尿病でも、必要となる薬は一人ひとり異なります。

  • 飲み薬(経口薬)
    ・治療開始時、まずは飲み薬が検討されることが多い
    ・主に2型糖尿病に使用される
    ・インスリン分泌を促すタイプ、インスリンを効きやすくするタイプ、糖の吸収や排泄を調整するタイプなど作用は多岐にわたる
    ・自己注射の手間がなく服用しやすいため続けやすい
  • 注射薬
    ・注射薬は「GLP-1受容体作動薬」「GIP/GLP-1受容体作動薬」と「インスリン注射」の3種類がある
    ・体内で不足しているインスリンを補う、またはインスリン分泌を助ける働きを持つ
    ・GLP-1受容体作動薬とGIP/GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病のみ、インスリン注射は1型、2型糖尿病どちらでも使われる
    ・糖尿病治療で使われる注射薬は、通常の針を取り付けるタイプだけでなく、針の取り付けが不要なものや週1回の投与で済むタイプなど、使いやすいよう工夫されている製剤もある

糖尿病治療は、血糖値の状態や症状に応じて進めます。

最初から注射薬を使用する場合や、飲み薬と注射薬の切り替えや併用、複数の薬を組み合わせる場合もあり、一人ひとりに適した血糖コントロールを目指します。

インスリンを出しやすくする治療薬

インスリンを出しやすくする治療薬は、すい臓に働きかけてインスリン分泌を促し、血糖値を下げる薬です。主に2型糖尿病で使用され、種類によって作用の仕方や効果の強さが異なります。

DPP-4阻害薬

DPP-4阻害薬は、食後に分泌される血糖値を下げる指令を出すホルモン「インクレチン」の分解を抑え、血糖値が高いときだけインスリンの分泌を促す飲み薬です。同時に、血糖値を上げるホルモン「グルカゴン」の分泌を抑えることで、食後の血糖値の上昇を穏やかに改善します。

DPP-4阻害薬は、低血糖のリスクが比較的低く、体重にも影響しにくいことから、2型糖尿病治療の初期段階で選ばれることの多い薬です。

DPP-4阻害薬
特徴
  • 食後の高血糖を改善する
  • 単独使用では低血糖が起こりにくい
  • ほかの治療薬に比べて、体重が増えにくい
服用方法
  • 1日1〜2回または週1回服用
  • 服用回数や服用タイミング(食前・食後など)は、使用する薬の種類や患者さまの状態によって異なる
主な副作用
  • 便秘
  • 下痢
  • 発疹

スルホニル尿素薬

スルホニル尿素薬は、すい臓を直接刺激してインスリン分泌を促します。血糖値を下げる作用が、ほかの糖尿病薬と比較して強い薬です。

スルホニル尿素薬のみの服用は、低血糖を起こすリスクがあります。そのため、最近ではほかの薬と併用し、量を抑えるケースが多くなっています。

スルホニル尿素薬
特徴
  • 血糖値を下げる力が強い
  • 血糖値の高さに関係なく、すい臓を刺激してインスリン分泌を促す
  • 治療薬の中でも古くから使われている
服用方法
  • 1日1〜2回服用
  • 服用回数や服用タイミング(食前・食後など)は、使用する薬の種類や患者さまの状態によって異なる
主な副作用
  • 低血糖
  • 体重増加
  • おう吐

速効型インスリン分泌促進薬

すい臓に働きかけインスリンの分泌を促し、食後の血糖値の上昇をピンポイントで抑える薬です。服用後すぐに効きはじめるため、食事を摂る直前に服用します。

効果の持続時間が短いため、スルホニル尿素薬と比較して低血糖のリスクが低いとされています。

速効型インスリン分泌促進薬
特徴
  • 服用するとすぐに効きはじめるが、持続時間は短い
  • 食後の血糖値の上昇を抑える
服用方法
  • 食事の直前(5〜10分前)に服用
  • 服用回数は、使用する薬の種類や患者さまの状態によって異なる
主な副作用
  • 低血糖
  • 肝機能障害
  • 下痢

GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬は、食後に分泌されるホルモン「GLP-1受容体※2」に働きかけ、血糖値が高いときにだけインスリン分泌を促す薬です。同時に、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑え、食後の血糖上昇を改善します。
GIP/GLP-1受容体作動薬は、GLP-1受容体に加えてGIP受容体※2にも働きかけます。2つの受容体を刺激することで、血糖値に応じたインスリン分泌をより効果的に促す薬です。

GLP-1またはGIP/GLP-1受容体作動薬は低血糖のリスクが比較的低く、体重管理にも配慮できる薬です。これらの注射製剤では、通常の針を取り付けるタイプだけでなく、針の取り付けが不要な使い切りタイプや、週に1回の注射で良い製剤など、剤形や投与頻度にはさまざまな選択肢があります。操作をできるだけ簡単にしたい方や、毎日の自己注射が負担になりやすい方など、生活スタイルや体調に配慮して選ばれます。

※2 食事後に、小腸から分泌されるインクレチンホルモン「GLP-1」「GIP」を受け取るすい臓などにあるタンパク質

GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬
特徴
  • 血糖値が高いときだけインスリン分泌を促す
  • 満腹感が持続して食欲を抑える
  • 低血糖が起こりにくい
  • 体重が増えにくい
服用方法 飲み薬(GLP-1受容体作動薬)
  • 1日1回、朝起きてすぐ、何も口にしていない空腹の状態で、コップ約半分の水(約120mL以下)と一緒に服用する
  • 服用時および服用後は、少なくとも30分は飲食およびほかの薬を服用しない
注射薬(GLP-1またはGIP/GLP-1受容体作動薬)
  • 1日1回もしくは2回注射/週1回注射
  • 注射回数は、使用する薬の種類によって異なる
主な副作用
  • 吐き気
  • 食欲不振
  • 下痢
  • 便秘

インスリンを効きやすくする治療薬

インスリンを効きやすくする治療薬は、主に2型糖尿病の治療に使用され、身体の中でインスリンが働きやすい状態を整えることで血糖値をコントロールします。単独使用では低血糖を起こしにくいとされていますが、ほかの糖尿病治療薬と併用している場合は注意が必要です。

ビグアナイド薬

ビグアナイド薬は、2型糖尿病の治療で広く使われている薬のひとつです。直接インスリン分泌を促すのではなく、肝臓で糖が作られるのを抑え、筋肉や脂肪組織で糖が取り込まれやすくします。また、小腸での糖の吸収も抑えるなど複数の作用によってインスリン効きやすい環境を整えます。

ビグアナイド薬
特徴
  • 単独使用では、低血糖を起こしにくい
  • 体重が増えにくい
  • 用量の調整幅が広く、患者さまの状態に合わせて使いやすい
服用方法
  • 1日2〜3回服用
  • 服用回数や服用タイミング(食前・食後など)は、患者さまの状態によって異なる
主な副作用
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 下痢
  • 便秘

チアゾリジン薬

チアゾリジン薬は直接インスリン分泌を促すのではなく、筋肉や肝臓、脂肪細胞などに働きかけ、インスリンを効きやすくすることで血糖値を下げる飲み薬です。
そのため、ほかの治療薬と組み合わせて処方される場合が多くあります。

また、体内に水分がたまりやすくなるため、心不全既往がある方や、むくみやすい方への処方は慎重に判断されます。

チアゾリジン薬
特徴
  • インスリンの効きを高めることで血糖値を改善する
  • 単独使用では低血糖を起こしにくい
  • インスリン抵抗性が強い方に適している
服用方法
  • 1日1回服用
  • 服用タイミング(食前・食後など)は、患者さまの状態によって異なる
主な副作用
  • むくみ
  • 体重増加
  • 肝機能障害

イメグリミン薬

細胞内のミトコンドリアの機能を改善する働きを通じて、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促す薬です。さらに、肝臓や筋肉などにも働きかけ、インスリンの効きも改善します。

イメグリミン薬
特徴
  • 血糖値が高いときだけインスリン分泌を促す
  • 低血糖を起こしにくい
  • 肝臓で糖が過剰に作られるのを抑え、筋肉が糖を取り込みやすくする
  • 2021年に承認された新しい飲み薬
服用方法
  • 1日2回服用
  • 服用タイミング(食前・食後など)は、患者さまの状態によって異なる
主な副作用
  • 吐き気
  • 下痢
  • 腹部の不快感

糖の吸収・排泄を調整する治療薬

食事で摂取した糖の吸収をゆるやかにしたり、体内で余った糖を尿として排出したりすることで血糖値を下げる薬です。

中でも、一部のαグルコシダーゼ阻害薬とSGLT2阻害薬は、インスリン注射と併用することで、1型・2型糖尿病両方に使われることがあります。

α-グルコシダーゼ阻害薬

α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸で食事から摂った糖の分解・吸収をゆるやかにし、血糖値の急な上昇を抑える飲み薬です。効きはじめるまでの時間が短いため、必ず食事の直前に服用します。

また、服用中に低血糖が起きた場合は、ブドウ糖を摂る必要があります。薬の働きによって、砂糖の吸収が遅れるため、砂糖ではすぐに血糖値が回復しないからです。

α-グルコシダーゼ阻害薬
特徴
  • 食後の血糖値の上昇を抑える
  • 単独使用では低血糖を起こしにくい
  • 一部の薬はインスリン注射と併用して、1型・2型糖尿病両方で使われることもある
服用方法
  • 食事の直前に服用(食事前の10分以内)
  • 服用中に低血糖になった場合は、ブドウ糖を摂取する
  • 服用回数は、患者さまの状態によって異なる
主な副作用
  • おなかの張り
  • 下痢
  • おならが増える

SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は、腎臓に働きかけ、余分な糖を尿として身体の外に出すことで血糖値を下げる飲み薬です。糖が排出されるときに、より多くの水分が尿として排出されます。また、腎臓や心臓を保護する働きを持ち、糖尿病だけでなく慢性腎臓病や心不全の治療にも使われる薬です。

1型糖尿病に使用する場合は、副作用のリスクが高まる可能性があるため、慎重に経過をみる必要があります。

SGLT2阻害薬
特徴
  • 余分な糖を尿として体外に出して、血糖値を下げる
  • インスリンの分泌や働きに直接依存しない
  • 体重減少がみられることがある
  • 1型糖尿病で使用する場合、副作用のリスクが高まる可能性がある
服用方法
  • 1日1回服用
  • 服用タイミング(食前・食後など)は、患者さまの状態によって異なる
主な副作用
  • 尿路感染症
  • 性器感染症
  • 脱水

薬と上手に付き合えば、毎日の血糖値管理もスムーズに

糖尿病治療の目的は、単に血糖値の数値を下げることではなく、合併症を防いで健康な生活を長く守ることにあります。
医師や薬剤師と相談して自分に合った薬を使いながら、日々の食事や運動といった生活習慣の改善にも、一歩ずつ取り組んでいきましょう。

参考文献・資料

記事監修

石黒 貴子

薬剤師/薬剤師歴27年

この記事をシェアする

  • LINEでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • Xでシェアする

関連記事

注目の記事

キーワードから探す