ペットボトル症候群とは?症状や治し方・糖尿病との違い

「たくさん水分を摂っても喉が渇く・・・」「身体がずっと重だるい・・・」
そんな身体の不調は、ふだん何気なく飲んでいる飲み物が原因かもしれません。

甘くて飲みやすい清涼飲料水の飲み過ぎは、血糖値の上昇を招いて、「ペットボトル症候群」につながる可能性があります。
今回は、ペットボトル症候群の症状や注意が必要な飲み物、無理なくできる予防法などをご紹介します。

ペットボトル症候群とは?

ペットボトル症候群は、スポーツドリンクや炭酸飲料などの糖分を多く含む飲み物を大量に摂取することで起こる、高血糖が原因の急性の代謝異常です。医学的には「清涼飲料水ケトーシス」「ソフトドリンクケトーシス」などと呼ばれます。
通常、食事や水分から摂取した糖分によって血糖値が上がると、すい臓から分泌されるインスリン※1の働きで、血糖値は一定にコントロールされます。しかし、短期間に大量の糖分を摂取すると処理が追いつかず、ケトン体という物質が生成され、体内に蓄積されることによってさまざまな身体の不調が現れます。

※1 すい臓から分泌され、血液中の糖(ブドウ糖)を細胞の中に取り込んでエネルギーとして利用できるように促し、血糖値を一定に保つ役割を持ちます。

なお、「糖類ゼロ」や「無糖」などと表示された飲み物も注意が必要です。食品表示基準では、飲料100ミリリットル当たりの糖類が0.5g未満であれば「ゼロ」と表示できますが、完全に糖質が含まれていないとは限りません。

「糖分ゼロなら大丈夫」と過信せず、甘い飲み物は摂りすぎないよう注意しましょう。

ペットボトル症候群の症状

ペットボトル症候群の初期症状は、暑さや夏バテ、毎日の疲労による症状と見分けがつきにくいため、注意が必要です。放置すると、後に重篤(じゅうとく)な症状を引き起こす可能性があります。

ペットボトル症候群の初期症状・重篤症状

ペットボトル症候群の初期は口・喉の渇きやだるさといった軽い不調が現れ、進行すると意識障害などの重い症状につながることもあります。そのため、初期症状のサインを見逃さず、早めに対処して重症化を防ぐことが大切です。

初期症状・重篤症状
初期症状
  • 口や喉の激しい渇き
  • 水分を摂っても渇きが治まらない
  • トイレが近くなる
  • だるさを感じる
重篤症状
  • 意識障害
  • 呼吸が荒い

過剰に摂取された清涼飲料水によって血糖値が高まると、処理しきれない糖分は尿へ排出されます。このとき、糖が体内の水分を尿に引き込んでしまうため、尿の量が増え、身体は脱水状態に陥ります。その結果、口や喉の激しい渇きや高血糖による全身のだるさが現れます。

ここで危険なのは、喉の渇きをうるおすために清涼飲料水を飲み続けることで、さらに血糖値が上昇し、症状が悪化する悪循環に陥ることです。

また、高血糖の状態が悪化してエネルギー代謝が乱れると、脂肪の分解によって作られるケトン体が血液中に急増し、血液が強い酸性に傾きます。血液が酸性に傾くと、心臓の動きや呼吸に欠かせない酵素の働きに影響を与えるため、より重篤な症状につながります。

なお、ペットボトル症候群は、特に2型糖尿病と似た症状がみられますが、発症までの期間や原因などに違いがあります。

ペットボトル症候群と2型糖尿病の違い
  ペットボトル
症候群
2型糖尿病
発症
までの期間
  • 数日〜数週間で急に発症することがある
  • 夏に多くみられる
  • 緩やかに進行する
原因
  • 短期間での清涼飲料水の過剰摂取
  • 食べすぎ、運動不足、肥満など
発症
年齢
  • 20~30代の若年層に多い
  • 中高年層に多い

注意が必要な人は?

ペットボトル症候群は、清涼飲料水の過剰な摂取によって血糖値が上昇し、糖尿病と同じような高血糖状態になる疾患です。
そのため、もともと血糖値が上がりやすい方や生活習慣にリスクがある方は、特に注意が必要です。
以下に当てはまる場合は、飲み物の選び方を見直しましょう。

注意が必要な人の例

  • 肥満傾向にある
  • ジュースやスポーツドリンクを日常的に摂取している
  • 甘いものを好んでよく食べる
  • 血糖値の異常を指摘されている

ペットボトル症候群は、清涼飲料水を好む若年層を中心に、水分摂取量が増える夏場に多くみられます。当てはまる項目があった方は、毎日の飲み物を水やお茶に変えるなど、少しずつ習慣を整えていくことが大切です。

こんな飲み物は要注意!

清涼飲料水には、糖分が多く含まれているケースが少なくありません。500ミリリットルの飲料に含まれる糖分量の目安は以下のとおりです。

注意が必要な飲み物

飲み物 糖分量
炭酸飲料 56.5g(角砂糖約17個分)
りんごジュース 55g(角砂糖約16.5個分)
ミルクティー 36.5g(角砂糖約11個分)
カフェオレ 36.5g(角砂糖約11個分)
スポーツドリンク 23.5g(角砂糖約7個分)

(糖分量※2は500ミリリットル当たりとして換算)
※2 糖分量は商品によって異なるため、パッケージの成分表示を確認してください。

例えば仕事中に炭酸飲料を1本、通勤時の水分補給にスポーツドリンクを1本飲んだ場合、飲み物だけで1日80g程度の糖分(角砂糖約24個)を摂取する計算になります。これは、WHO(世界保健機関)が推奨する1日の遊離糖(ゆうりとう)類※3の摂取目安(25g未満)の3倍以上に相当します。

また、清涼飲料水を1日中摂取し続けると、すい臓は常にインスリンを分泌し続ける必要があり、血糖値のコントロールも乱れてしまいます。

日常的に口にする飲み物は、特に含まれる糖分量を意識しましょう。

※3 遊離糖類(フリーシュガー)とは、食品や飲料に添加される単糖類・二糖類(糖アルコールを除く)に加え、はちみつやシロップ、果汁などに含まれる天然由来の糖類も含めた総称のことです。

ペットボトル症候群になってしまったら

もしペットボトル症候群になっても、早い段階で治療を開始し、生活習慣を整えることで症状の改善は十分に可能です。

病院で行う治療

ペットボトル症候群が疑われる場合は、血液検査などによって高血糖の程度や体内の状態を確認します。
特に、以下のような異常がみられます。

  • 250mg/dL※4を超えるような高血糖である
  • 血液が酸性に傾いている
  • 血液中にβ-ヒドロキシ酪酸という物質が増える

※4 mg/dL(ミリグラム・パー・デシリットル)」は濃度の単位で、1dL(100mL)の血液中に何mgの物質が含まれているかを表します。

治療の基本は、水分補給とインスリンの点滴によって血糖値を下げることです。血糖値や電解質の状態を確認しながら、慎重に治療が進められます。
状態が安定すると、必要に応じて自己注射や飲み薬による治療へ移行する場合もあります。また、再発予防のために食事や運動など生活習慣の見直しも行います。

自宅で行う治療

自宅では、医師から処方された血糖値をコントロールする薬を正しく服用し、食事や運動など生活習慣を見直すことが大切です。
まずは、清涼飲料水の摂取を控えましょう。糖分の多いジュース類や甘いコーヒー(カフェイン含有飲料)、甘い紅茶などは、水や無糖のお茶類などに切り替えます。

また、食事は栄養バランスにも注意して、なるべく毎日同じ時間に摂りましょう。食後の血糖値の急上昇を抑えるため、野菜、おかず、炭水化物の順で食べるのもポイントです。摂取カロリーは、体質など個人によって異なるため、医師の指示に従ってください。

食後に運動する習慣をつけるのも、血糖値のコントロールに役立ちます。特に座っている時間が長い方は、毎日少しずつ身体を動かすように心がけてみてください。

ペットボトル症候群を防ぐためにできること

日々の工夫や意識により、糖分の過剰摂取は予防できます。飲み物の性質を理解し、健康な状態を維持しましょう。

水分補給を水やお茶に変える

毎日の水分補給は、糖分を含まない水や麦茶などを選びましょう。
ペットボトル症候群を防ぐポイントは、飲み物を「水分補給」と「嗜好品」に分けて考えることです。炭酸飲料やジュースなどの甘い飲み物は、水分ではなくお菓子のような嗜好品として考えましょう。

また、カフェインやアルコール類は利尿作用があり、摂取した水分が排出されやすくなります。そのため、コーヒー(カフェイン含有飲料)やお酒類は水分補給には適していません。これらも楽しむためのものとして考え、水分摂取には水やノンカフェインのお茶類を選択しましょう。

なお、スポーツドリンクや経口補水液にも糖分が含まれるため、運動時や脱水対策が必要な場面に限定して活用するようにしましょう※5

※5 高血圧や糖尿病、腎臓病などの持病をお持ちの方は、スポーツドリンク・経口補水液を飲めない場合があります。あらかじめ医師や薬剤師へご相談ください。

飲み方を工夫して糖分摂取量を抑える

人間の舌は、15〜35℃の間が一番甘みを感じやすいとされています。そのため、冷たい飲み物は甘みを感じにくく、無意識のうちに糖分を摂りすぎてしまう傾向があります。

甘い飲み物を楽しむ際は、常温に近い温度でゆっくりと味わいましょう。少量でも甘さをしっかりと感じられるため満足感を得やすく、飲みすぎを防げます。

水筒を持ち歩く

外出時に水やお茶類を入れた水筒を持参すれば、清涼飲料水を購入する頻度を自然に減らせます。糖分摂取を抑えられるだけでなく、喉が渇いたときはすぐに飲むことができ、飲み物の購入費用の節約にもつながります。

成分表示を確認する習慣をつける

飲み物を購入する際は、パッケージ裏の「栄養成分表示」を確認する癖をつけることも大切です。
糖分量は炭水化物や、糖質または糖類の項目で確認できます。表示は100ミリリットル当たりの数値であるケースが多いため、1本当たりの容量をかけ合わせると、実際に摂取する糖分量を把握できます。

購入前に一度表示を確かめて、糖分の少ない飲み物を選びましょう。

定期的に健康診断を受ける

血糖値の異常は自覚症状として現れにくく、だるさや喉の渇きなどを感じるころには症状が進行しているケースが少なくありません。そのため、定期的な健康診断で血糖値やHbA1c※6の数値を確認し、尿糖の有無なども把握しておくことが大切です。

また、尿に糖分が出ていないかを確認する尿検査も高血糖の発見に役立ちます。健康診断の結果を、生活習慣の改善に役立てましょう。

※6 HbA1cは過去1~2か月の血糖値を反映したもの

清涼飲料水を「水代わり」にしない習慣を

ペットボトル症候群は、重篤な状態に陥るリスクがある一方で、早期の発見と治療で、日常生活への影響を抑えることができます。
そして、何よりも大切なのは、日々のちょっとした意識です。清涼飲料水は、お菓子と同じ嗜好品であり、喉をうるおす水分とは異なります。飲む量や頻度を見直して、過剰な糖分摂取に気を付けましょう。

参考文献・資料

記事監修

野原 弘義

精神科医/産業医

2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。

この記事をシェアする

  • LINEでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • Xでシェアする

関連記事

注目の記事

キーワードから探す