体温調節機能が未発達な赤ちゃん(乳児)にとって、熱中症は大人以上に注意が必要です。
「暑くないかな?」と気を配ることはもちろん、異変にいち早く気付いてあげることが、命を守ることにつながります。
今回は、乳児が熱中症になりやすい理由や注意すべきサイン、日常生活の予防法と、いざというときの対処法までご紹介します。
赤ちゃんはなぜ熱中症になりやすい?
乳児が熱中症になりやすい理由には、身体の仕組みが大人と異なることが挙げられます。
- 体温調節機能が未発達で、体温が上がりやすい
- 身体が小さく外気の影響を受けやすいため、大人より短時間で体温が上がる
- 体内の水分割合が高く、失われるスピードも速いため脱水になりやすい
- べビーカーに乗った際、地面との距離が近く、照り返しの影響を受けやすい
大人が「これくらいなら大丈夫」と感じる環境でも、乳児の身体には大きな負担がかかっている場合があります。そのため、乳児にとって快適な環境を整えてあげることが大切です。
これって熱中症?見逃せない危険サイン
乳児は、大人の熱中症と同じような症状が出ない場合があります。そのため、以下のサインが出ていないか、こまめに確認してあげましょう。
- おしっこの回数と色
・回数や量がいつもより少ない
・尿の色が濃い - 体温と肌の状態
・熱がある
・大量に汗をかいている、高温環境にもかかわらずまったく汗が出ていない
・顔が赤い
・皮膚が赤くなる、乾燥している - 機嫌と様子
・元気がない
・あくびを繰り返す
・吐き気やおう吐がある
・呼びかけへの反応が鈍い
・ぐったりしている
・ひきつけ、けいれんがみられる
このように、かぜや胃腸炎と似た症状が現れます。ふだんと違うと感じたときは、すぐに涼しい場所へ移動して体調の変化を見守りましょう。
赤ちゃんの熱中症を予防するには?
ちょっとした工夫で、乳児の熱中症リスクは下げられます。ここからは、具体的な予防法を、3つのポイントに分けてご紹介します。
ベビーカーの暑さ対策をする
ベビーカーは、大人よりも地面に近い位置で移動するため、路面からの照り返しの影響を強く受けてしまいます。大人の顔の高さよりも気温が3~5℃高くなることもあるため、外出前には以下のような暑さ対策を心がけましょう。
- 地面からの照り返しを防ぐシートや、通気性の良い日よけカバーを活用する
- 通気性や吸湿性の良い服を着せる
- 外出の際は熱中症の警戒アラートや暑さ指数を確認する
- 自治体が指定しているクーリングシェルター※1を利用する
※1 危険な暑さから身を守るために市町村が指定した、無料の休憩場所。お近くのクーリングシェルターはこちらからご確認ください。
ときどき抱っこをして、背中に汗をびっしょりかいていないか、直接肌に触れて確認しましょう。また、首の後ろに当てるタイプの保冷パッドを使うのも効果的です。窒息のリスクがあるため、首巻きタイプや額に貼るタイプはおすすめしません。
アイン薬局では、暑い日の一時休息所として薬局を開放しており、給水機などのある薬局では無料で水分補給ができます。気軽に薬局でお休みください。
お近くのアイン薬局は「薬局検索」からご確認いただけます。

エアコンを上手く使って室温管理をする
「冷房は良くないのでは?」と思うかもしれませんが、体温調節が未熟な乳児にとって、適切なエアコンの使用は必要不可欠です。屋内での熱中症も多く報告されているため、エアコンを上手に使って、快適な環境を整えてあげましょう。
- 室温26~28℃、湿度60%を目安に調整する
- エアコンの風が直接当たらないよう、風向きを上にしたり、お昼寝や過ごす場所をずらしたりする
- 扇風機やサーキュレーターで空気を循環させる
- 夜間も室温が上がりやすいため、エアコンのタイマーを長めに設定する
大切なのは、エアコンの設定温度ではなく、寝ている場所など過ごしている空間の温度を確認することです。ベビーベッドの近くに温湿度計を置き、冷えすぎや乾燥に気を配りながら、家族みんなが心地良い空間づくりを心がけましょう。
少量・こまめに水分を補給する
乳児は体内の水分量が多く、少し水分を失うだけでも、大人より脱水を起こしやすい特徴があります。外出前など、タイミングを決めて水分を与える習慣をつけましょう。
生後4~5か月頃までは、基本的に母乳やミルクだけで十分な水分を摂取できますが、汗をかいたときは授乳回数を増やすか、必要に応じて湯冷ましを与えて対応します。
なお、1歳を過ぎるまでは水道水をそのまま飲ませるのは避け、一度沸騰させた湯冷ましを用意してください。
日常の水分補給は常温の水や麦茶を基本とし、カフェインを含むウーロン茶や緑茶は避けましょう。
また、大量に汗をかいた際や脱水が心配なときは、水だけでは補えないナトリウムや糖分をバランスよく含んだ、乳幼児用の経口補水液やベビー飲料※2を活用するのが効果的です。
※2 通院中や治療中の疾患がある場合、経口補水液やベビー飲料が適さないことがあります。自己判断で飲ませる前に、医師や薬剤師へ相談しましょう。
赤ちゃんが熱中症になってしまったときの対処法
もし「熱中症かな?」と思われる症状が出たら、まずは落ち着いて応急処置を行いましょう。
- エアコンが効いた屋内や風通しの良い日陰など、涼しい場所に移動する
- 衣服をゆるめる、脱がせるなどして休ませる
- 首、脇の下、太ももの付け根など太い血管がある部位を冷やす
- 水分が摂れそうな場合は、経口補水液やベビー飲料※2(月齢が低い場合はミルクや母乳)を少しずつ飲ませる
※2 通院中や治療中の疾患がある場合、経口補水液やベビー飲料が適さないことがあります。自己判断で飲ませる前に、医師や薬剤師へ相談しましょう。
また、急激に体温を下げすぎると低体温のリスクがあります。全身を氷水につけたり、氷水で濡らしたタオルを全身に当て続けたりすることは推奨されていません。身体を冷やす際は、水で濡らしたタオルで身体を拭く、霧吹きで身体を濡らして風を送るなどの方法が有効です。
涼しい場所で休ませている間にも、症状が急に変わる場合があるため、すぐそばで、いつもと様子が違わないか注意深く確認しましょう。以下のような場合は、すぐに119番で救急車を呼んでください。
- 意識がない、反応が鈍い
- けいれんを起こしている
- 水分がまったく摂れない
- 呼吸がおかしい
迷ったときは子ども医療電話相談(#8000)に電話すると、今すぐ受診が必要かアドバイスをもらえます。
応急処置で改善がみられた場合でも、あとから悪化する可能性があるため、念のため医療機関で診てもらうと安心です。
大人がしっかり見守り無理のない熱中症対策を
体調の変化を言葉にできない年齢だからこそ、一番近くにいる大人がその特性を理解し、先回りして対策をとることが大切です。ベビーカーの環境や室温の管理、こまめな水分補給など、日々のちょっとした心がけが大切な命を熱中症から守ります。
正しい知識があれば、過度に心配する必要はありません。できることから無理なく対策を取り入れ、ご家族一緒に夏を安心して過ごしましょう。
参考文献・資料
記事監修
野原 弘義
精神科医/産業医
2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。






