いますぐできる!大人も子どもも知っておきたい乗り物酔い対策

「せっかくの旅行なのに、車や船に乗ると気持ち悪くなってしまう…」そんなお悩みはありませんか?

今回は、乗り物酔いの原因やいますぐできる対策をまとめました。移動中に役立つツボ押しや、子どもを安心させる声かけのコツまで詳しく紹介します。

乗り物酔いはなぜ起きる?

乗り物酔いは、目から見える景色、耳の奥の三半規管が感じる揺れや加速、筋肉が感じる身体の動きが脳内で一致しないときに起こります。

例えば車内で本を読むと、目は静止した本を見ているのに、三半規管は車のスピードの変化やカーブを感知し、身体も揺れを感じています。この矛盾した情報によって脳が混乱し、自律神経が乱れます。その結果、おう吐中枢が刺激されて、吐き気や気分の悪さが生じるのです。

運転手が酔いにくいのは、自分で操作しながら前方を見ることで動きを予測でき、視覚と感覚のズレが生じにくいためです。

さらに、ガソリンの臭いなどの不快な環境、睡眠不足や空腹・満腹といった体調、「酔うかもしれない」という不安などの心理的要因も自律神経を乱し、乗り物酔いを引き起こす原因となります。

【移動前】前日〜出発直前にできる対策

乗り物酔いは、前日や出発直前の過ごし方で予防できる場合があります。

十分に睡眠を取る

乗り物酔い対策として、まず大切なのは十分に睡眠を取ることです。

睡眠不足や疲労がたまると自律神経が乱れやすく、乗り物酔いしやすいといわれています。また、睡眠不足は脳の疲労にもつながり、脳が疲れていると情報の処理能力が低下し、ふだんなら酔わない揺れでも酔いやすくなります。

そのため、出発前日は荷づくりを早めに済ませ、大人は8時間前後、子どもは10時間前後の睡眠時間を確保しましょう。

食事は「空腹」も「満腹」もNG

食事は空腹でも満腹でも、乗り物酔いを起こしやすくなるため注意が必要です。

空腹時は、血糖値が低下して自律神経が乱れやすくなるほか、胃酸が胃の粘膜を直接刺激することで吐き気を誘発しやすくなります。一方、満腹時は胃が膨らみ消化器への負担が増えるため、吐き気などの不快感が起こりやすくなります。これらはいずれも、乗り物酔いを引き起こす要因と考えられています。

乗り物で移動する前の食事は、腹八分目を意識して出発の1~2時間前までに済ませましょう。胃腸への負担を抑えるため、脂っこいものは避けて、消化に良い軽食を摂るのがポイントです。

遠方への帰省や船旅、飛行機での移動など、乗り物に乗りながら食事を摂る場合もあります。

乗り物酔いが心配で食事を抜いてしまうと、空腹状態となり、逆効果につながります。車内などでの食事も、出発前と同じように、できるだけ消化に良いものを少しずつ食べるようにしましょう。

衣服は「締め付け」をなくす

首元、胸、おなかを締め付けるような服装は、乗り物酔いの誘因となり、不快感が増すため避けるようにしましょう。
乗り物に乗るときは、心身ともにリラックスできるゆったりとした服選びが大切です。

  • ネクタイやベルトはゆるめる
  • スキニーパンツなどのタイトな服は避ける
  • ウエストがゴムのパンツやワンピースなど、締め付けのないゆったりとした服を選ぶ
  • ワイヤー入りの下着や補正下着は避け、カップ付きインナー(ブラトップ)などにする

酔い止め薬は出発の30分前に服用する

酔い止めは、自律神経の乱れを抑えたり、吐き気を予防・緩和したりするなど、乗り物酔いの予防に有効です。「飲んだから大丈夫」という安心感も酔いにくさにつながると考えられています。

予防タイプの酔い止め薬の多くは、効果が現れるまでに時間がかかるため、出発の30分前までに服用することが基本です。
一方で、酔い始めてから効果を発揮するタイプも存在します。水なしで飲めるチュアブルタイプやドリンクタイプも販売されており、移動中でもすぐに服用でき便利です。「少し気分が悪いな」と感じたら、我慢せず早めに対処しましょう。

なお、酔い止め薬の効果の持続時間は種類によって異なるため、移動時間に合わせて選びましょう。
1日2~3回服用するタイプは、1回当たり約4時間効果が続くため、次の服用までは4時間以上間隔を空ける必要があります。

1日1回服用するタイプは、約8~12時間ほど効果が続くため、長時間の移動に向いています。

持病がある方や、常用している薬がある場合は注意が必要です。併用によって持病の悪化や、副作用が現れることがあるため、服用前に医師や薬剤師へ相談してください。

【乗り物別】酔いにくい座席の選び方

乗り物酔いを予防するには、乗り物に乗るときの座席選びも重要です。座席を選ぶ際には、「揺れを感じにくい」「身体が進む感覚と目から入る情報が一致する」点を意識しましょう。

バス・車は「前列」か「助手席」

バスの場合、タイヤの真上の席は路面の振動が伝わり酔いやすいため、タイヤから離れた前列~中央付近が適しています。また、車は運転手と同じ視点でカーブや停止を予測できるため、進行方向が良く見える助手席がおすすめです。

電車は「進行方向向きの席」

電車の場合は、身体が前に進む感覚と目から入る情報が一致する進行方向を向く席を選びましょう。また、車両の連結部分は揺れるため、車両の中央付近の席がおすすめです。

後ろ向きの席や、通勤電車のようなロングシートは、景色と身体の進行方向が一致せず、乗り物酔いしやすいため、扉付近に進行方向と同じ向きに立つという方法も選択肢のひとつです。

飛行機は「主翼付近の席」

飛行機の場合、機体中央の翼(主翼)付近や、中央から前方の席を選ぶようにしましょう。後方の席は、主翼によって発生する細かい気流の影響で揺れを感じやすく、乗り物酔いしやすいためです。

船は「中央のなるべく低い位置」

船酔いを防ぐには、船体の中央に近く、できるだけ低い位置を選びましょう。船の中央付近は重心に近いため、波による上下や前後の揺れが比較的少なくなります。また、低層階は高層階や屋外デッキに比べて揺れが小さい傾向があります。

【移動中】酔わないための過ごし方

乗り物酔いしないためには、移動中どのような過ごし方が良いのでしょうか。

五感への刺激をできる限りコントロール

乗り物酔いは、視覚や嗅覚など五感への刺激が引き金になることがあります。酔いにくくするためには、こうした刺激を上手にコントロールすることも大切です。

  • 嗅覚のコントロール
    たばこ食べ物、芳香剤、ガソリンなど、車内の臭いは乗り物酔いの大きな原因のひとつです。窓を開けて換気や無香料の消臭剤の活用もおすすめです。
  • 視覚のコントロール
    スマートフォンや本など手元で静止した物を見ると、乗り物酔いの原因となります。身体の揺れと視覚情報のズレをやわらげるためには、遠くや進行方向を見るようにしましょう。
  • 聴覚のコントロール
    耳栓を使って音の刺激を遮断したり、静かな音楽や好きな音楽をイヤホンで聴いたりしましょう。また、同乗者と楽しく会話することも、脳の意識を揺れからそらすことができるため有効です。
  • 味覚のコントロール
    ガムを噛むことであごが動き、脳の血流が増えるほか、ストレスホルモンが抑えられてリラックスしやすくなります。
    また、ガムの味に意識が向くことで、乗り物の揺れから注意をそらす効果も期待できます。中でもミントガムは、近年の研究で乗り物酔い防止への有効性が示唆されています。
  • 触覚のコントロール
    揺れの刺激をやわらげるために、座席に深く座り、頭や身体をできるだけ動かさないようにしましょう。ネックピローなどの活用もおすすめです。

【緊急時】気持ち悪くなってしまったときの応急処置

出発前や移動中に対策をしていても、乗り物酔いを防げないことがあります。気持ち悪くなってしまったときは、すぐにできる対処を行うことが大切です。

すぐできる!乗り物酔いに効くツボを押す

ツボを押すことで、乗り物酔いがやわらぐことがあります。移動中でもその場でできるため、気分が悪くなったときの対処法として知っておくと安心です。

  • 内関(ないかん)
    ・ツボの位置:手首の関節からひじ側に指3本分離れたところ
    ・ツボの押し方:親指の腹で心地良いくらいに、深呼吸をしながら押します。「5秒押して離す」を5回ほど繰り返します。さらに、ゆっくり円を描くように刺激しましょう。手を入れ替えて、左右両方の内関を押します。
  • 合谷(ごうこく)
    ・ツボの位置:親指と人差し指の骨が交わる場所で、軽く手を開いた状態で人差し指よりの谷間
    ・ツボの押し方:反対の親指と人差し指で挟むようにして、少し強めに押します。 左右交互に1~2分ずつ行いましょう。

身体を冷やし頭を固定する

乗り物酔いは、自律神経が乱れている状態です。窓を開けて冷たい空気を入れたり、首回りや額を冷たいペットボトルや濡れタオルで冷やすことで、交感神経が優位になって改善が期待できます。

また、身体や頭の揺れを少なくするのもおすすめです。シートを倒して体勢を安定させ、ヘッドレストに頭を付けてなるべく動かさないようにすると良いでしょう。

子どもの乗り物酔い対策で大人ができるサポートとは?

子どもの乗り物酔いは、大人のサポート次第で軽減できる場合があります。移動前の準備や移動中の声かけなどを意識することが大切です。

「酔うかも」という暗示をかけないこと

子どもにとって「また、乗り物酔いになるかもしれない」という不安は、心理的に大きなストレスとなります。また、親の過剰な心配は子どもに伝わるため注意が必要です。

出発前には、体調管理など酔わないためのサポートをしてあげましょう。当日は酔い止め薬を活用するのもおすすめです。薬を飲むことで「これで大丈夫」「もし酔っても薬があるから安心」という気持ちにつながります。

さらに、車中では楽しい話題で乗り物酔いから意識を遠ざけるのも効果的です。子どもには、「酔わない魔法をかけるね」と声をかけてあげるのも良いでしょう。

チャイルドシートでの目線の高さや姿勢に注意する

車で移動する際は、子どもの目線の高さと姿勢に注意しましょう。後ろ向きのまま座ったり、チャイルドシートに埋もれて外の景色が見えないことで、乗り物酔いを起こしやすくなります。進行方向を向き、窓の外が見える位置に座面の高さを調整することがポイントです。
乳幼児の場合、安全のため後ろ向きのチャイルドシートが推奨されていますが、年齢が上がると、景色が見える前向きのシートの方が酔いにくい場合があります。

また、頭や身体が安定せずに揺れると、乗り物酔いにつながります。年齢や体格に合っていて、身体をしっかり支えられるチャイルドシートを選びましょう。乗車中は、ベルトがおなかや首を強く締め付けていないか、首や背中に負担がかかっていないかなど、姿勢にも気を配ることが大切です。

万全の対策で移動時間も楽しもう

乗り物酔いは、目から入る情報と身体で感じる揺れとの「ズレ」によって起こります。さらに臭いや体調不良、不安感などが重なるとより悪化しやすいため、事前の対策や体調管理が欠かせません。
原因を一つひとつ取り除き、万全の対策で快適な移動時間を過ごしましょう。

参考文献・資料

記事監修

野原 弘義

精神科医/産業医

2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。

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