糖尿病の食事療法 気を付けるべきこととは?

おさらいしよう!糖尿病のこと

糖尿病の原因と主な初期症状・治療法」では糖尿病がどういう病気なのか解説しました。
簡単におさらいしましょう。

糖尿病は、日本人の5~6人に1人が患っており、現代の国民病とも言える身近な病気です。
糖尿病には大きく分けて2つのタイプ(1型糖尿病と2型糖尿病)があり、日本の糖尿病患者の約95%は2型糖尿病です。

2型糖尿病では、血糖値をコントロールするホルモンのインスリンがうまく働かず、血糖値が不安定になります。
しかし、目立った初期症状はなく、発見が遅れることもしばしば。
高血糖が続くと、動脈硬化が進行し、心臓病や脳卒中に至るケースもあります。
そのほか、網膜症、腎症、神経障害といった重大な合併症も起こりうるので、早期発見・早期治療が重要です。

そして、2型糖尿病の発症には、生活習慣が大きく関与しています。
チェックリストで早速チェックしてみましょう。

2型糖尿病を招く生活習慣とリスク因子

  • 運動不足である
  • 朝食を抜く、間食が多い、夕食が遅い、早食いである
  • きのこ類・海藻・野菜・果物の摂取が少ない
  • 喫煙者である、禁煙して体重が増えた
  • アルコール日本酒換算で平均1日2合以上飲んでいる
  • 体重が多い、最近体重が増えた
  • 高血圧症がある
  • 親兄弟(姉妹)が糖尿病だ

今回は、食生活において気を付けるべきことを解説していきます。

「食生活の改善」が重要な理由

先述のとおり、2型糖尿病は血糖値を正常に調節できないことが主な特徴であるため、血糖値の変動をできるだけ抑えることが重要です。
食生活の改善により血糖値の急上昇や急降下を防ぐことができれば、血糖値をコントロールするインスリンの働きが減り、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)の負担も減らすことができるからです。
意識的に食品を選ぶことに加え、食べ方を工夫することで血糖値をコントロールできるので、後で詳しく紹介します。

また、1型糖尿病の方も2型糖尿病とは異なる糖質管理が必要です。
かかりつけ医や栄養士と相談したうえで取り組んでください。

食生活の改善ポイント①食品選び

糖質の摂取量を意識する

糖尿病の食生活において、特に意識する必要があるのは「ふだん、どのくらい糖質を摂取しているか」です。
「糖質」とは、炭水化物から食物繊維を除いたものを指します。
摂取すると、腸から血液に吸収されて血糖値を上昇させ、身体活動に必要なエネルギー源になります。
適正な血糖コントロールを行うために、糖質量を意識しバランスの良い食生活を心がけましょう。
糖質が少なめの食品を選ぶことも効果的です。

糖質が多い食品・少ない食品の例

穀類
糖質が多い 糖質が少ない
白米、食パン、うどん 大麦・玄米・全粒粉等の精製度の低い穀物、全粒穀物を使ったパンやシリアルなどの加工食品
いも類
糖質が多い 糖質が少ない
じゃがいも さつまいも、さといも、やまいも
糖質が多い 糖質が少ない
赤身、脂身、皮、レバー、ベーコン、ウインナー もも肉、ひれ肉、鶏肉の胸肉、ささみ
魚類
糖質が多い 糖質が少ない
いくら、たらこ等の魚卵 アジ、イワシ、サンマ等の青魚
乳製品
糖質が多い 糖質が少ない
バター、生クリーム ヨーグルト、牛乳、チーズ
果物
糖質が多い 糖質が少ない
缶詰の果物やドライフルーツ等の糖度の高いもの りんご、ぶどう、グレープフルーツ等の食物繊維が豊富なもの
菓子類
糖質が多い 糖質が少ない
ジュース、アイスクリーム 低GI・低糖質に加工されたスイーツ
糖質が多い 糖質が少ない
醸造酒(日本酒、ビール) 蒸留酒(焼酎、ウォッカ、ブランデー、ウイスキー)、赤ワイン
調味料
糖質が多い 糖質が少ない
みりん、中濃ソース、カレールウ しょうゆ、マヨネーズ、酢、カレー粉
そのほか、積極的に食べたい食材
豆製品(豆腐、納豆、高野豆腐)、食物繊維が豊富な野菜(トマト、ブロッコリー、小松菜、ほうれん草)、海藻類(ひじき、わかめ、もずく)、きのこ類

低GI食品を活用する

糖質のほかに意識すべき指標として、糖質の吸収の度合いを示す「GI」があります。
GIが低い食品ほど摂取後の血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンが正常に働きやすくなります。
高GIの食品を控えたり、低GIの食品に置き換えたりするなど、上手に工夫していきましょう。
近年は、低糖質食品や低GI食品も増えていて、スーパーやコンビニエンスストアでも購入できます。

GI値のレベルと食品例
GI値のレベル 食品例
高GI
(70以上)
白米、パン
じゃがいも、人参
果物ジャム、練乳
中GI
(56~69)
玄米、コーンフレーク
さつまいも
ぶどう、アイスクリーム
低GI
(55以下)
そば
きのこ類、葉物野菜
りんご、ヨーグルト

参考:山梨県厚生連健康管理センター 「食品のGI値」を活用し、健康な体をつくりましょう!

食物繊維を多く含む食品を取り入れる

食物繊維が豊富な食品も有効です。
食物繊維は消化や吸収が遅いので、同時に食べた炭水化物の吸収を遅らせることで血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。
仮に高GIの食品を食べるときも、食物繊維の多い食品を一緒に食べることで、ある程度血糖値の急激な上昇を抑えることができます。
また、食物繊維は消化に時間がかかるので、満腹感が持続して食べ過ぎ防止にもつながります。
一般的に、低GIの食品は食物繊維が多い傾向にあります。

食生活の改善ポイント②「食べ方」の工夫

食物繊維を多く含む食品から食べ始める

野菜→タンパク質→炭水化物の順に食べると、血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。
血糖値が急激に上がると、それに反応してインスリンが大量に分泌され、過食から糖尿病を招くリスクが高まってしまいます。
ポイントは、食物繊維を多く含む野菜を炭水化物よりも先に食べること。
先に野菜や汁物で胃が満たされると、食べ過ぎを防ぐことにもつながります。

食後血糖値が上がりにくい
「食べる順番」

食後血糖値が上がりにくい「食べる順番」。野菜→タンパク質→炭水化物。

ゆっくりと、よくかんで食べる

時間をかけてよくかむことで満腹中枢が働き、適度な食事量で満腹感が得られます。
また、よくかむことで食べ物が細かくなると、消化活動を行う胃腸の負担が軽減されます。

  • 1口ごとに30回数える
  • お箸やスプーンを1口ごとに置く
  • 小さめのスプーンやフォークを使う
  • 口の中の食べ物を完全に飲み込んでから次を口に含む
  • 1口分食べ終わったら水分を飲む(水分制限がある方は医師の指導に従ってください)

腹八分目を意識し、一気にたくさん食べない

ドカ食いやまとめ食いといった「一気に大量に食べる」ことが習慣になっている方もいるでしょう。
これらの食べ方では食後の血糖値が急上昇してしまい、血糖コントロールを乱す原因となります。
また、消化を担う胃腸の負担も増え、消化不良や胃もたれといった不調を引き起こす可能性も高くなります。

寝る前を避け、1日3食を規則正しく食べる

食事と食事の間隔をしっかり空けると、血糖値を下げる時間を確保でき、血糖値が安定しやすくなります。
そのため、食事の回数も、朝・昼・間食・夜の1日4回より、朝・昼・夜の1日3回が理想です。
甘いものを食べたいときは、間食ではなく食後のデザートにすると良いでしょう。

間食のポイントについては、下記の記事で紹介しているので、参考にしてください。

食事の時間にも注意が必要で、空腹の状態が長く続くと過食につながりやすくなります。
できるだけ一定の間隔で食べることを意識してください。
もし、生活リズム上どうしても食事の時間を一定にできない場合は、食事を分割して小腹を満たしておくことをおすすめします。
例えば、昼食の時間が遅くなりそうだったら10時ごろに全粒粉クラッカーを1袋(小袋)食べておく。
夕食の時間が遅くなりそうだったら夕方におにぎりを1つ食べておき、夕食のメニューは炭水化物を少なめにするというように工夫します。
特に、夕食が遅くなると就寝までの時間が短くなり、エネルギーとして消費されにくくなります。
脂肪として体に蓄積されることで体重増加につながり、胃腸が活発に働くことで睡眠の質も低下します。
また、翌朝になって空腹感を覚えず朝食を抜くと、昼食時の空腹感が強くなってドカ食いやまとめ食いをするという悪循環につながります。

バランスの良い食事を意識する

食べ過ぎが良くないことはもちろんですが、極端なダイエットにも注意が必要です。
一日に必要なエネルギー量や栄養素をしっかりと摂取し、健康的な食生活を送りましょう。
ポイントは、食品のバランスを意識すること。
三大栄養素を適切に摂取できるよう心がけてください。

そのために、まずは現状把握からはじめましょう。
いまの自分が何をどのくらい食べているのかを知れば、不足している栄養素や補うべき食品群が見えてきます。
毎日の食事メニューを試しに5日~1週間記録してみましょう。

書き残すのが面倒であれば、写真に撮る方法もあります。
できていること/できていないことが明確になれば、次に取るべき行動がより具体的になります。

2型糖尿病における
三大栄養素の推奨摂取比率

2型糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率の円グラフ。炭水化物50〜60%、脂質20〜30%、タンパク質20%。

外食やテイクアウトは?上手に活用するコツ

外食やテイクアウトでも、低糖質メニューを選んだり、サラダなどを付け加えて食物繊維を補ったりと、血糖値が急上昇しないポイントを押さえることが重要です。
時には外食やテイクアウトに頼って息抜きしながら、無理のない食生活を送りましょう。

下記の記事では、5色(赤・黄・緑・黒・白)の食材を意識して栄養バランスを整えること、カロリー・塩分・脂質を摂り過ぎないこと、成分表示の正しい見方を理解するなど、具体例を交えて解説しているので、参考にしてください。

運動も効果的

血糖値を下げるためには、食事だけではなく運動も効果的です。
食後1時間は避け、1回当たり30分程度、少し汗をかくくらいの運動を習慣化してみましょう。
ただし、運動の内容や強度について、事前に主治医と相談してください。

血糖値によっては、食生活の改善や運動と並行して飲み薬やインスリン注射を使った治療を行うこともあります。
インスリン注射は比較的症状の重い方、飲み薬では血糖コントロールが難しくなった方が対象となることが多いです。
インスリンの分泌がほとんどない1型糖尿病の方も対象となります。
症状が重くなる前に、生活習慣の改善や飲み薬で対処できると良いですね。
薬を使った治療は長期にわたることもあるので、医師に指示されたことを守り、しっかりとコントロールしていきましょう。

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参考文献・資料

記事監修

野原 弘義

精神科医/産業医

2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室 入局。
2018年 製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年 アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。

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