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免疫力を高める方法とは?
食事や運動、
生活習慣のポイント

私たちの健康を守る重要な働きを担う「免疫(めんえき)」は、風邪やインフルエンザなどの感染症から身体を守り、日々の健康維持に欠かせない身体の防御システムのようなものです。
しかし、ストレスや睡眠不足、偏った食生活など現代的な生活習慣により、知らず知らずのうちに免疫力が低下していることも。
今回は、日々の食事や運動、生活習慣の中で実践できる免疫力アップの方法をわかりやすく解説。健康的な毎日を送るためのヒントをお届けします。
免疫力とは?その重要性について
免疫とは、体内に侵入してくる細菌やウイルスなどを排除して、病気から身体を守ろうとする防御反応のことです。
免疫には生まれながらにして備わっている「自然免疫」と、一度病気にかかることで働くようになる「獲得免疫」があります。
「免疫力」という言葉は、うまく働いていない自然免疫を正常に戻すことや、予防接種などによる病原体に対する獲得免疫のことを例えて、「免疫力を高める」というように使い、健康的な生活を送るために重要な役割を果たしています。
免疫力を高めるために今からできること
心身が健康でなければ免疫はうまく働いてくれません。免疫力を高めるには、健康を維持向上させる生活を送ることが大切です。そして、健康であるためには「食事」「運動」「生活習慣」を改善することが重要です。
また、免疫力は体温と深く関係しています。日本人の平均体温は約36.5℃前後ですが、体温が1℃下がると免疫力が低下すると言われています。食事や運動、生活習慣を見直すことで、体温のアップや維持ができるようになり、それが結果的に免疫力を高めることにもつながります。
この3つの観点から、免疫力を高めるために今からできることをご紹介します。
食事で高める
免疫システムは、病原体や異物を排除する免疫細胞や免疫物質がチームを組んで働いており、免疫細胞や免疫物質はすべて私たちが食べたものからつくられます。そのため、免疫力を高めるためには、まず食事に気を配る必要があります。
1 バランスの取れた食事を意識する
それぞれの栄養素は、以下のように免疫と関係しています。
- タンパク質や脂質:免疫細胞や免疫物質をつくる
- 糖質:活動エネルギー
- ビタミンやミネラル:免疫システムがスムーズに働くための潤滑油
これらの栄養素はひとつとして欠かせないものであり、食品から上手に取り入れるには食事のバランスがとても大事です。厚生労働省では1日分のカロリーに占める割合を、タンパク質20%、脂質20~30%、炭水化物(糖質+食物繊維)50~60%とすることを推奨しています。

まずは、主食・主菜・副菜を意識するようにしましょう。
食材の例としては以下のとおりです。
食材の例
主食 |
主に炭水化物を含む食材
|
お米やパン、
麺類 など |
主菜 |
タンパク質や脂質を含む食材
|
魚や肉、
大豆製品 など |
副菜 |
食物繊維などが含まれた食材
|
野菜やきのこ、
海藻類 など |

また、摂取カロリーと消費カロリーも意識できると良いでしょう。1日に必要となる摂取カロリーの目安は、年齢や性別、身体活動レベルによって異なります。下記を参考にしてください。
- 身体活動レベルがふつうの成人男性の場合:2,250〜2,600kcal
- 身体活動レベルがふつうの成人女性の場合:1,750〜1,950kcal
-
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
この目安をもとに、1日分の食事の量とメニューに置き換えて主食・主菜・副菜を考え、バランスの良い食事を3食きちんと摂るよう心がけましょう。
2 タンパク質が含まれた食材を取り入れる
タンパク質を多く含む食材

タンパク質は免疫細胞や免疫に必要なホルモンや酵素の主成分です。また、病原体や異物が侵入してきたときに現れる免疫成分(抗体)もタンパク質でできています。
免疫成分(抗体)は、自然免疫が排除できなかった侵入者をとらえて排除するための重要な役割を担っているため、免疫力を高めるには十分な量のタンパク質が必要です。
タンパク質を構成しているアミノ酸は20種類のうち、食事から摂取が必要な必須アミノ酸は9種類で、このバランスが良いほど良質なタンパク質といえます。
タンパク質を多く含む食材

良質なタンパク質が含まれる食品:
魚類、肉類、大豆製品(豆腐、納豆など)、卵、乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)
1日に必要なタンパク質の推奨量は、成人男性60〜65g、成人女性50gとされています。この量を目安に、良質なタンパク質を含む食材を毎日の食事に取り入れましょう。
3 抗酸化作用のある食材を意識する
抗酸化作用のある食材

呼吸によって取り込まれた酸素がエネルギーに変換される際にできる「活性酸素」は、体内に侵入した病原体を退治するために必要で、免疫システムにおいて重要な任務を果たしています。
ところが、活性酸素が増えすぎると細胞を傷つけ、逆に免疫力を低下させてしまいます。余分な活性酸素を消去するために必要なのが抗酸化物質で、体内ではアミノ酸や亜鉛などのミネラル、ビタミンなどからつくられます。
ビタミンそのものにも抗酸化作用を持つものがあり、その代表的なものがビタミンA、C、Eの3種類です。またビタミン以外にも、植物がつくり出すポリフェノールやイオウ化合物などにも強力な抗酸化作用があります。
抗酸化作用のある食材

ビタミンA、C、Eやポリフェノールなどを多く含む代表的な食材は以下のとおりです。
成分 | 代表的な食材 |
---|---|
ビタミンA |
レバー、うなぎ、
まぐろの赤身 |
ベータカロテン (体内でビタミンAに変化) |
モロヘイヤ、にんじん、
ほうれん草 |
ビタミンC |
さつまいも、レモン、
ブロッコリー |
ビタミンE |
かぼちゃ、はまち、
アーモンド |
ポリフェノール |
赤ワイン、コーヒー、
緑茶 |
イオウ化合物 |
ニンニク、キャベツ、
ブロッコリー、大根 |
抗酸化作用のある食材を意識して摂取することで、免疫力を高めることはもちろん、皮膚の老化を抑えたり、血管を強くしたりする効果が期待できます。
4腸内環境を整えてくれる食材を取り入れる
腸内環境を整えてくれる食材

腸には全身の免疫細胞の6~7割が存在するといわれています。また、腸に生息する腸内細菌は、免疫細胞の成長を促す物質をつくり出しています。腸内環境を整えることは、腸内細菌の働きを良くして免疫力を高めることにつながります。
腸内環境を整える食材には以下があります。
善玉菌を直接補給できる食材:豆乳、ヨーグルト、チーズ、納豆などの発酵食品
腸内細菌のエサとなる食材:食物繊維を含む食品(モロヘイヤ、オクラ、アシタバ、さといも、ながいも)、海藻類
腸内環境を整えてくれる食材

また下痢や便秘、おなかの張りなどの不調を感じるときは整腸剤を利用することもおすすめです。整腸剤の主な成分はビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌で、腸内環境を整える作用があります。
運動で高める
運動不足による体力や筋力の低下は、免疫力の低下につながるため、適度な運動習慣を取り入れることが大切です。
身体を動かすことで、血液やリンパの流れを改善し、免疫細胞の働きを活性化させます。
2 筋力トレーニングをプラスする
運動に使う筋肉は免疫と関係が深く、筋肉の再生に免疫細胞が関与したり、筋肉運動が免疫細胞を増やしたりすることが知られています。
また、免疫システムのエネルギー源としてアミノ酸が使われますが、筋肉はアミノ酸の貯蔵庫であり、燃料の供給源として免疫をサポートする役割もあります。
そのため、有酸素運動に筋力トレーニングをプラスすることで、有酸素運動だけ行うときよりも健康効果はアップします。
効率の良い筋力トレーニングとして、スクワットがおすすめです。
アイン薬局では、フレイル予防体操として「フレイル予防体操15 かんたん!スクワット」を紹介しているので、参考にしてください。
有酸素運動、筋力トレーニングの種類を問わず、持病のある方は、医師に相談してからはじめてください。
急に慣れない過度な運動をすると免疫力の低下や筋肉や関節を傷める可能性があります。特に、肥満や高血圧、心臓や血管の持病がある場合は、自己判断で運動をはじめることはせず、事前に医師と相談するようにしましょう。
3 ストレッチやヨガもおすすめ
有酸素運動や筋トレ以外では、ストレッチやヨガがおすすめです。ストレッチを10分間行うだけで、心拍数と体温が上昇し、ストレスホルモンの分泌が減少します。ストレスホルモンが減ることで睡眠の質が上がり、疲労が残りにくくなります。
また、ストレッチやヨガを行うことでリラックス効果が期待できるので、メンタルヘルスにも良い影響があります。運動が苦手な方はヨガやストレッチで免疫力を高めるのがおすすめです。
生活習慣で高める
健康の三要素は食事、運動、生活習慣のバランスであり、これは健康三原則とも呼ばれています。免疫力の向上にも、食事、運動、そして休養を含めた生活習慣が重要なカギを握っています。
質の高い睡眠のためのポイント
2 自分に合ったストレス発散法を見つける
現代人の生活にはストレスがつきものですが、脳はストレスを感じると、ある種のストレスホルモンを分泌します。ですが、このホルモンは、量が少なく短時間の分泌であれば免疫システムを活性化します。
しかし、分泌が過剰になり慢性的にこのホルモンにさらされてしまうと、免疫力は低下してしまいます。さらに過剰な分泌が続くと、ホルモンをつくる臓器が疲弊してしまい、ストレスに対処できなくなる可能性が高まります。
そうならないためには、ストレスをため込まず、発散する方法を見つけることが大切です。ストレスを感じたら、まずはゆっくり休みましょう。入浴やマッサージなどもおすすめです。また、散歩や旅行、音楽鑑賞、スポーツ観戦や食べ歩きなど、自分が楽しいと思うこと、リフレッシュできる方法を見つけてストレスを解消し、免疫力アップにつなげましょう。
免疫力が落ちるとどうなるの?
免疫は、侵入してきた病原体や異物から身体を守る防御システムです。機能低下を起こすと細菌やウイルスなどに対する抵抗力が落ちてしまい、ふだんなら感染しないような力の弱い細菌にも感染するようになってしまいます。
低下することで起こるリスク
免疫力が低下すると細菌やウイルスなどが体内に侵入しやすくなります。特に喉や鼻、皮膚などは外界と接しているため、感染症が起こりやすくなります。
免疫力が低下すると、以下のようなことが起こります。
- 風邪やインフルエンザにかかりやすくなる、治りが遅くなる
- ふだんなら感染しない感染力の弱い病原体にかかりやすくなる
- 今まで出てこなかったアレルギーが出てくる
- 発疹や肌あれ、脱毛、いぼなどができやすくなる
- 食あたり、下痢を起こしやすくなる
- 歯周病のリスクが高まる
低下する原因
免疫力が低下する原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 加齢
- 喫煙
- 飲酒
- 慢性的なストレス
- ホルモンバランスの乱れ
- 睡眠不足
- 運動不足や過激な運動
- 生活習慣の乱れ
加齢は避けられないものですが、生活習慣を改善することで老化やストレスは軽減することができます。また、喫煙や飲酒、睡眠不足など自分の努力で改善できることも少なくありません。免疫力が落ちないように、健康的な毎日を楽しく送ることが大切です。
免疫力を高めて健康的な毎日を送ろう
免疫に関する疑問があるときや、自分に合った免疫力アップの方法を知りたいときは、ぜひアイン薬局の薬剤師にご相談ください。
公式アプリ「いつでもアイン薬局」の「安心お薬サポート」を使えば、チャットやビデオ通話で薬剤師に気軽に相談できます。※1
薬局まで足を運ばなくて良いので、とても便利です。これを機に、ぜひアイン薬局のアプリをご活用ください。
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ご利用には「アイン薬局とつなぐ」のご登録が必要です。
参考⽂献・資料
記事監修

野原 弘義
精神科医/産業医
2014年 慶應義塾大学医学部卒業。
2016年 慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室
入局。
2018年
製薬会社の統括産業医に就任し、大手金融企業や広告代理店企業などの産業医を務める。
2023年
アインファーマシーズ統括産業医に就任。
スタートアップ企業の産業医にも注力しながら、生活習慣病とメンタルヘルスの方への夜間診療を行うMIZENクリニック市ヶ谷麹町の院長として日々診療に従事している。