リスクマネジメント

当社グループは、ファーマシー事業及びリテール事業を主として展開している企業であり、いずれも人々の健康を担う性質上、コンプライアンスを最重視した健全かつ透明な事業活動を継続することが不可欠と認識しています。適切なリスク管理を行うことで、企業の持続的な成長の確保を図るとともに、企業の社会的責任を果たします。

考え方

当社グループは、処方箋に基づき調剤を行う調剤薬局事業と医薬品・化粧品を中心とした商品を販売するコスメ&ドラッグストア事業を主として展開しており、いずれも人々の健康に関与していることから、社会的に重大な責務を負っていると認識しています。そして、医薬分業の進捗に伴う積極的な出店による企業収益及び株主価値の増大を図ることに加えて、人々の生命に携わる企業として、その業務の安全性及び専門性の継続的向上に努めることが、私たちの使命であると考えています。
そのため「市場環境に応じた積極的な事業拡大を重視する一方で、調剤過誤等の事業リスクの徹底的な排除に取り組み、患者さまに安心して足を運んでいただける薬局をつくることにより、その社会的使命を果たす。」ことを経営の基本方針としても掲げています。

推進体制

当社グループ全体のリスク管理について定める「リスク管理規程」及び「リスクマネジメントガイドライン」を策定し、リスクカテゴリーごとの担当部署を定め、グループ全体のリスクを網羅的・統括的に管理しています。また、全社のリスクを統括する部署としてリスクマネジメント室を設置し、グループ全体のリスクマネジメント推進に係る課題・対応策を統括管理しています。さらに、当社グループのリスク管理の運用状況は、内部監査室が実地監査において遵守状況及び有効性について検査を行っています。
危機の発生時に当社グループの事業の継続を図るため、グループの「事業継続計画(BCP)」を策定し、当社グループの全役職員に周知徹底しています。

リスク情報

当社グループの経営成績、財務状況及び株価に影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、前連結会計年度末において当社グループが判断したものです。

法的規制について

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等による規制について

ファーマシー事業は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、医薬品医療機器等法)、健康保険法、薬剤師法をはじめとした各種許認可、免許、登録、届出等により、厚生労働省及び都道府県保健福祉部の監督の下、保険薬局及び調剤薬局(以下、保険調剤薬局)を営業しています。
また、リテール事業のコスメ&ドラッグストア事業においても、同様に医薬品医療機器等法に基づく医薬品の販売を行っています。
その主要な内容は次のとおりです。

許可、登録、指定、免許、届出の別 有効期間 関連法令 登録等の交付者
薬局開設許可 6年 医薬品医療機器等法 各都道府県知事
保険薬局指定 6年 健康保険法 厚生労働省地方厚生局長
麻薬小売業者免許 3年 麻薬及び向精神薬取締法 各都道府県知事
高度管理医療機器販売業 6年 医薬品医療機器等法 各都道府県知事
医薬品販売業許可※ 6年 医薬品医療機器等法 各都道府県知事等

医薬品販売業許可は、医薬品医療機器等法第25条において、店舗販売業、配置販売業、卸売販売業の3つの許可に区分されています。リテール事業は、店舗販売業の許可を受けています。
万一、当社グループの保険調剤薬局及びコスメ&ドラッグストア事業において、医薬品医療機器等法第75条第1項、健康保険法第80条各号及び麻薬及び向精神薬取締法第51条第1項等に規定される法令違反等に該当する行為があり、監督官庁から業務停止命令及び取消し等を受けた場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

医薬品の販売規制緩和について

一般医薬品の販売については、医薬品医療機器等法によってリスク区分に応じて要指導医薬品及び第1類医薬品は薬剤師のみが、第2類医薬品及び第3類医薬品は薬剤師または登録販売者が販売しなければならないと規制されています。
今後においても、医薬品販売に係る規制緩和の動向により、異業種の同事業への参入等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

ファーマシー事業について

ファーマシー事業は、保険調剤薬局のチェーン展開を行っています。
当連結会計年度における売上高において、ファーマシー事業が占める割合は約89.6%であり、今後も保険調剤薬局を主軸とした多店舗展開を継続する方針です。したがって、M&Aを含む調剤薬局の出店政策の成否や同業他社の出店動向により、当社グループの経営成績は影響を受ける可能性があります。
保険調剤薬局の売上は、処方箋を発行する医療機関に依存する割合が高く、主たる応需先となる医療機関の予測困難な院外処方箋の発行動向並びに休廃業が、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、インフルエンザや花粉症(アレルギー性鼻炎)等季節性疾患の流行により、処方箋応需枚数は季節変動の影響を受ける可能性があります。

業界動向について

ファーマシー事業の収入は、処方箋に基づき医療用医薬品を調合投与する調剤行為であり、その薬剤の価格(薬価)及び報酬額は、厚生労働省により定められています。また、国民医療費の抑制策として、診療報酬及び薬価の改定が段階的に実施される傾向にあります。今後においても、診療報酬制度等の改定による収益構造の変化が、当社グループの経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

資格者の確保について

保険調剤薬局及びドラッグストア(第1類医薬品取扱店舗)は、医薬品医療機器等法の規定により薬剤師の配置が義務付けられており、また、薬剤師法では、調剤業務は薬剤師が行わなければならないと規定されています。
当社グループは、積極的な出店による拡大政策を継続していますが、薬剤師確保が困難な状況になった場合は、出店計画及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

企業の信用を失墜させるリスクについて

調剤業務について

ファーマシー事業は、人体に影響を及ぼす医療用医薬品を薬剤師が扱っており、調剤過誤による医療事故を引き起こす可能性を内包しています。
当社グループは、医療事故が会社の社会的信用を著しく失墜させる可能性があるものと認識し、あらゆる側面から、当該リスクの回避に向けた取り組みを最重要課題と位置づけています。
その主要な取り組みは次のとおりです。

  • 新卒薬剤師及び中途採用薬剤師を対象とした入社時研修制度
  • 勤務薬剤師のスキルアップを目的とした継続的な研修制度
  • 管理者育成のため、全薬局長が出席する薬局長会議の実施
  • 調剤機器メーカーとの共同開発による調剤過誤防止システムの配備、調剤業務のオートメーション化等IT技術を応用した調剤機器の開発及び導入
  • 調剤業務に関する自社マニュアルの利用及び内部監査室によるルール遵守体制
  • 調剤過誤防止対策を専門に扱う安全対策室の設置

個人情報保護について

ファーマシー事業では、薬歴、処方箋に代表される患者情報を保持し、リテール事業では、アインズ&トルペ公式アプリの運用に伴う顧客情報を保持しています。
当社グループは個人情報保護体制並びに取り扱いに対するルールを徹底することにより万全を期し、主要事業会社であるアインファーマシーズは「保健医療福祉分野のプライバシーマーク」を取得しています。
しかしながら、事故ならびに犯罪行為による個人情報の漏洩があった場合、経営成績のみならず社会的信用を失墜させる可能性があると考えています。

事業戦略上のリスクについて

当社グループは、保険調剤薬局の積極的な新規出店及びM&Aにより、事業規模の拡大を推進しています。
M&A戦略においては、対象会社を慎重に検討し、発生するのれんの償却額を超過する収益力を安定的に確保することが可能な買収額により行うことを基本方針としていますが、買収後、計画どおりに進まない場合には、子会社株式評価損、のれんに係る減損損失等の損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

金利変動リスクについて

当社グループは、積極的な新規出店とともに、M&Aを活用した事業拡大を推進しており、通常の出店費用においては、営業キャッシュ・フローの範囲で自己資金により充当していますが、大型のM&Aに関しては、一部を金融機関からの借入れにより調達することがあります。
これらの資金需要に機動的に対応するため、一定水準の手元流動性を確保しています。
M&Aの実施にあたっては投資回収可能性を重視し、効率的投資により有利子負債の圧縮に努めていますが、M&Aに対する投資回収が十分に確保できない場合及び金融市場の動向等に伴う金利変動が、当社グループの財務状況及び支払利息等経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

消費税等の影響について

ファーマシー事業の社会保険診療に関する調剤売上は、消費税法上非課税となりますが、一方で、医薬品等の仕入には消費税が課税されています。
この結果、当社グループが負担することとなる消費税を、調剤売上原価に計上しています。
過去の消費税の改定及び調剤報酬改定時には、消費税率の上昇分が薬価の改定において考慮されていましたが、今後、消費税率が改定され、その影響が薬価に反映されない場合は当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

感染症の拡大に伴うリスクについて

感染拡大防止のための外出自粛が求められるような感染症が拡大した場合、ファーマシー事業においては、外来受診抑制等による処方日数の長期化を要因として、処方箋単価は増加する一方で、処方箋枚数は減少することが考えられ、リテール事業においては、外出自粛、店舗の臨時休業及び営業時間短縮の実施、インバウンド需要の減少等による来店客数減少の影響が考えられ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

自然災害等に伴うリスクについて

各地域において、大規模な地震や風水害、気候変動を起因とする台風・豪雨等の自然災害等が発生した場合、社員や店舗・事業所への被害等が、当社グループの財務状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

気候変動課題への対応(TCFD)

個人情報保護

当社グループは、医療に関わる事業を展開する企業の責任として、お客さま及び患者さまからの信頼を第一と考え、「個人情報」につきましても人格尊重の理念の下に適切に保護し管理することが非常に重要であると考えています。そのためにグループ各社では、個人情報保護方針を定め、これを実施し、かつ、維持することを宣言しています。また、主要事業会社である株式会社アインファーマシーズは2008年2月に保健医療福祉分野の「プライバシーマーク」を取得いたしました。「プライバシーマーク」は、JIS Q 15001(「個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」)に適合して個人情報の適切な保護のための体制を整備している事業者に対し、日本情報経済社会推進協会より付与されます。

アイングループの個人情報保護方針

推進体制

アインファーマシーズでは、個人情報保護法及びJIS Q 15001に対応したマネジメントシステムを確立するため、個人情報保護管理者及び個人情報保護監査責任者を設置し、さらに教育担当、苦情・相談窓口担当、企画・推進担当、情報システム担当、運用管理担当を含め、個人情報保護の体制を整備し、安全管理措置を推進しています。個人情報保護管理者及び企画・推進担当はマネジメントレビューのため個人情報保護委員会を開催し、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の見直し及び改善の基礎として判断するための事項を、年次にて社長に報告を行います。また、PMSの運用状況については、各部門の管理責任者による月1回の自己チェックを実施し、個人情報保護監査員による年1回の監査を行っています。

主な取り組み

PMSの基本となる要素の文書化

基本である「個人情報保護方針」に加え、これを実現するため必要な各種の内部規程、内部規程に定める手順上で使用する様式、教育や監査の計画を明確に文書化しています。
内部規程としては、基本的事項を定めた「個人情報保護規程」、個人情報の漏えい、滅失又はき損の事故等が発生した場合において、法令、国が定める指針その他の規範に従って迅速かつ適切な対応を行うことを目的とする「個人情報保護に関する緊急事態対応マニュアル」、セキュリティ実現を目的とする「情報システム管理規程」等を策定し、適切な管理・運用を行っています。

グループ全社におけるPMS運用

アインホールディングス及びグループ各社においても、プライバシーマーク取得済のアインファーマシーズと同様の水準にてPMSを確立し、運用を行えるよう個人情報保護取組みの自主点検及び内部監査の対象を順次拡大しています。

教育研修

PMSの重要性の理解を図るために、個人情報保護に関する教育及び理解度チェックテストを、グループすべての役員・社員を対象に毎年実施しています。教育内容は、法令改正や状況変化を踏まえ随時更新しています。

プライバシーマーク更新審査の受審

アインファーマシーズでは、社内監査とは別途、2年に1回MEDIS(一般財団法人 医療情報システム開発センター)による保健医療福祉分野のプライバシーマークの更新審査を受け、PMS水準の維持向上を推進しています。

情報セキュリティ

アイングループ情報セキュリティ基本方針

アイングループは、ファーマシー事業とリテール事業を主として展開しており、いずれもお客さま・患者さまからお預かりした情報をはじめ、アイングループが保有する情報資産をあらゆる脅威から保護し、適切な安全管理を実現するため、情報セキュリティに取り組むことは極めて重要な責務であると認識しています。この認識のもと、社内のセキュリティ体制の確立と遵守を図り、社会から信頼される企業として発展していくことを目的として社内のセキュリティ管理体制を構築しています。

推進体制

当社グループでは、情報システム責任者を設置し、情報セキュリティ体制の強化と徹底を図っています。情報システム責任者は情報セキュリティ戦略の立案・施策において経営層とコミュニケーションを図りながらその推進を実行するとともに、当社グループにおける機密情報管理・情報システム管理・情報セキュリティ対策に関する規程等の整備及び運用の徹底、安全対策の実施、教育等の監督を行っています。

主な取り組み

サイバーセキュリティ対策

サイバー攻撃を経営における重大なリスクとして、ネットワークへの不正侵入防御や適切なアクセス制御等の複数階層での防御層の構築、外部からの侵入に対応できる体制の整備、人材の教育や訓練、外部専門機関との連携等を通じて、サイバーセキュリティ対策の強化に努めています。

専門性の高い第三者機関との協業

第三者機関による脆弱性診断と対応等、セキュリティ事故を未然に防ぐための対策を推進しています。

教育研修

情報資産を守る行動を確実に実行するために、個人情報保護および情報セキュリティに関する教育及び理解度チェックテストを、グループのすべての役員・社員を対象に毎年実施しています。また、情報セキュリティに関する最新情報を社内ポータルサイトの掲示板にて周知する等、情報のアップデートも行っています。

レジリエンス(災害やパンデミックにおける活動)

自然災害やパンデミック等の緊急事態においても薬局や薬剤師の役割を果たすため、事業継続計画(BCP)を策定し、医薬品及び医療サービスの提供を遂行する体制を整えています。 また、一部の薬局には服薬支援ルームを設置しており、感染症等さまざまな疾病に対応が可能です。

2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大をはじめた当時、全国で医療資材が不足する中、マスク約12万枚をはじめ、防護服やガウン、フェイスシールド等をいち早く医療機関へ提供しました。また「さっぽろまちづくりパートナー協定」より、札幌市の新型コロナ感染防止対策への協力を行った他、「災害協定」を結んでいる遠軽町等、地域とも緊密な連携体制を構築することにより、医療貢献に取り組みました。

災害における支援

翌日からの営業再開
OTCトリアージ活動等

2011年3月 東日本大震災
震災翌日から営業を再開し、OTCトリアージ活動等を実施

※トリアージとは、災害発生現場等において多数の傷病者が同時に発生した場合、傷病者の緊急度や重症度に応じて適切な処置や搬送をおこなうために傷病者の治療優先順位を決定すること

モバイルファーマシーへの薬剤師派遣等
緊急に必要な医薬品及び関連物資の支援活動等

2018年6月~7月 西日本豪雨
モバイルファーマシーへの薬剤師派遣等を実施

2019年10月 台風19号
緊急に必要な医薬品及び関連物資の支援活動等を実施

災害発生時安否確認訓練の実施

年に4回、災害発生時の社員安否確認等の定期訓練を実施しています。災害やパンデミック等、社員の生命・健康を守るとともに、医薬品及び医療サービスの持続的な提供の遂行に向けて備えています。

避難訓練の実施

国が想定している巨大地震やその他の自治体が想定している地震等に対して、各店舗の立地条件を踏まえ、津波の襲来の有無や避難すべき建物の階数、津波が到達する時間等を考慮した避難のあり方を示す「避難モデル」を策定し、それらをもとに年に1回、全薬局にて避難訓練を実施しています。一次避難をスムーズに進めることで、患者さまと社員の安全を守り、医療サービスを継続して提供できる体制を構築していきます。

※国が想定している巨大地震とは、日本海溝・千島海溝地震、首都直下型地震、南海トラフ地震(東海地震、東南海・南海地震)のこと

店舗条件に合わせた避難モデルを活用し、営業時間内での地震を想定。患者さまと社員役に分かれ安全確保や指定避難所への避難等を行うとともに、チェックリストによる振り返り、評価を実施

災害拠点病院主応需薬局における備蓄整備

全国の災害拠点病院近くにある当社グループの薬局では、OTC医薬品や衛生用品等をはじめとする資材の備蓄を整理し、有事の際に医療活動を継続できる医療拠点としての整備を進めています。