監査役鼎談 新体制でガバナンスを
一層強化
急成長を支える
「持続可能な監査体制」
の実現へ

常勤監査役 大木 守 (写真右)

社外監査役 佐野 綾子 (写真中)

社外監査役 水谷 美奈子 (写真左)

アイングループは「売上高1兆円企業」という次なるステージを目指し、変革期を迎えています。M&Aを含む積極的な成長戦略を推進する一方で、その基盤となる健全なガバナンス体制の重要性は、これまで以上に高まっています。こうした中、ガバナンス体制の要となる監査役会の体制も刷新。社外監査役の弁護士・佐野綾子、税理士・水谷美奈子は2年目を迎え、2025年7月に元内部監査室長の大木守が新たに常勤監査役に就任しました。それぞれの視点から、当社グループの急成長を支えるガバナンス強化の要諦を語ります。

大木守(以下・大木) 2025年7月に常勤監査役を拝命いたしました。今年で入社40年目となります。リテール事業やファーマシー事業の現場を経験した後、18年間にわたり内部監査室(現経営監査室)で経験を積んできました。直近では内部監査室長を務め、個人情報保護法の施行・改正時や金融商品取引法の改正時にはコンプライアンス体制の構築にも携わってきました。

監査役会における私の役割は、会社の健全な成長を促すために、的確な質問や改善策の提案を行うことだと考えています。それが最終的には患者さまやお客さまのためになると信じております。また、これまで培ってきた社内全体の業務に対する知見やネットワークを最大限に活かし、社外監査役である佐野さんや水谷さんとともに、社内の各部署を「つなぐ役割」を意識し、監査役会がより実効性の高いものとなるよう尽力していく所存です。

佐野綾子(以下・佐野) 大木さんが新たに就任されたことで、監査役会の体制がより強固になり、バランスも一層良くなったと感じています。私は弁護士として法務・コンプライアンスの知見を、水谷さんは税理士として財務・会計の専門性を、そして大木さんは薬剤師であり、内部監査の豊富な経験をお持ちです。強力な布陣になったと感じています。

その中で私に課せられた責務は、取締役の業務執行の妥当性や適法性を厳正に監査することです。当社グループが過去に経験した事案を教訓とし、ガバナンス体制をさらに高度化していくプロセスを監督する「お目付け役」として、会社にとって例え耳の痛いことであっても、臆することなく伝えることが私の役割であると認識しています。

水谷美奈子(以下・水谷) 私たち社外監査役も2年目を迎えましたが、社外監査役の立場からは現場の状況をタイムリーに把握できない部分も多いため、大木さんのように社内の各部署にネットワークをお持ちの常勤監査役が加わってくださったことは、大変心強いです。

特に当社グループは現在、M&Aによって急速に拡大しており、監査役の役割はますます重要になっています。監査役として会計監査人の業務を監督しながら財務の妥当性を担保し、同時に経営の監視をすることは私に課せられた責務です。それに加え、新たにグループに加わった企業に対して、創業以来の企業理念やカルチャーを浸透させるプロセスを見守ることも、内部統制上、現状では重要だと考えています。監査は単なるチェック機能にとどまらず、経営陣に「気づき」をもたらす触媒でありたいと思っています。組織の一体感を醸成するため、今後も多角的にサポートしていきたいと考えています。

「ルールの背景にある教訓と精神を、次世代へと伝えていくことが大事」

現場の声を経営に届ける。変化に対応し、監査の視点も進化させる

佐野 この1年間は、他社での社外役員としての経験を活かし、役員同士、また役員・事務局間の情報共有の方法の改善等、さまざまな提案をしてきました。その過程で、当社グループには社外の意見を傾聴し、積極的に受け入れる企業風土が根付いていると実感しました。「やらない理由を探すのではなく、まずはやってみよう」という姿勢が浸透しており、そのおかげで改革もスムーズに進んでいると実感しています。

象徴的な事例のひとつを紹介します。アインホールディングス(以下、当社)は、従前、決算期末から1か月強で決算短信を発表していました。もっとも、近年のM&Aでグループの規模が急拡大し、経理部門だけでなく監査法人の負担が高まっていることが分かりました。加えて、さくら薬局グループのグループ入りで、その負担がさらに高まることも自明でした。同時に、早期の決算発表を行っている他社の、訂正リリースも目に付きました。迅速な情報開示も重要ですが、無理な対応で誤った数値を公表してしまっては、かえって投資家の方にご迷惑をおかけします。そこで水谷さんと相談のうえ、取締役会において、東京証券取引所の規範の範囲内でのスケジュール見直しの必要性を指摘したところ、取締役の方々からも種々の意見が出され、前向きに検討してもらえることになりました。

このように、グループ内では疑問視されていなかった慣行に疑問を呈することも社外監査役の重要な役割です。こうした取り組みが、組織全体のパフォーマンス向上にもつながると考えています。

水谷 就任初年度だったこの1年間は、会社の現状と課題を深く理解するため、各部署の責任者の方々に対し密にヒアリングをさせていただきました。また、大谷社長とも直接お話する機会をいただき、創業者としての思いや会社の歴史について伺うことができました。こうした対話を通じて会社の理念や課題への理解を深めたうえで、取締役会や各部署とのヒアリングの場で、社外監査役としての気づきや意見を伝えるようにしています。

また、会社の規模が急拡大する中で、監査の視点も常に進化させていく必要があると考えています。この1年間で印象的だったのは、異業種であるFrancfrancをM&Aした後のプロセスでした。大きな挑戦であり、当初はM&A後にグループ内で計画どおりに事業を軌道に乗せられるか個人的に多少の不安も抱いていました。取締役会での毎月の財務報告に加え、M&Aから約1年後に担当事業部から現状分析、課題抽出、そして今後の事業計画を伺い、私の不安は良い意味で裏切られることになりました。担当執行役員はじめ現場の皆さんが非常に高い熱意と課題意識を持って緻密に事業成長に取り組んでおり、今では大きな可能性を感じています。

大木 常勤監査役就任前に内部監査の立場からお二人の活動を見ていて、非常に実効性があると感じていました。経営監査室がルール遵守の観点から監査を行うのに対し、社外監査役のお二人は、業務の前提に疑問を投げかけたり、現場の課題にスポットを当てたりと、異なる視点から重要な役割を担ってくださっています。それぞれの専門性が掛け合わさることで生まれる相乗効果は、監査体制をより強固なものにしていると感じます。本部・支店等、業務を管轄する拠点の監査をしっかり強化していきます。

それに加えて、調剤過誤の教訓もしっかり語り継いでいくことも常勤監査役としての私の役目だと考えています。かつて当社グループが経験した大きな調剤過誤を知る社員が少なくなり、M&Aで多様な仲間が増える中、調剤に関するルールについて、「なぜそのルールが設けられたのか」という本質的な理解に差があると感じる場面があります。「調剤過誤ゼロ」という理念を形骸化させないためにも、ルールの背景にある教訓や精神を、世代や経歴の垣根を越えて浸透させていきたいと考えています。

リスクを管理し、急成長を支える健全で強固なガバナンス体制

佐野 大木さんがお話になった「教訓を語り継ぐ」という姿勢こそが、まさに当社グループのガバナンスの強みです。過去の事案を単なる失敗で終わらせず、「これを機に徹底的に会社を変える」という強い覚悟で自浄作用を働かせたことからも、それは明らかです。当社グループのウェブサイトのトップページに過去に発生した事案の特設サイトを設け、調査報告書や再発防止策の取り組み状況を掲載しているのはその象徴と捉えています。これは、対外的なアピールのためではなく、ガバナンス強化に向けた意思表明といえます。この徹底した透明性と自浄作用は、当社グループの大きな強みだと考えています。

水谷 ガバナンスの健全さは、日々の取締役会にも表れていると感じます。当社の取締役会は毎回とても活発な議論が交わされており、社外取締役も含め、さまざまな専門性を持つ役員が忖度なく意見を述べています。特に、最近は「リスク管理」が重要なキーワードとなっており、新規投資の際にはあらゆる角度からリスク分析が行われています。私も監査役として、見落としているリスクがないか常に注意を払いながら議論に参加していますが、多様な専門家がそろっているからこそ、多角的な分析が可能になっていると実感しています。

その活発な議論を牽引するのが、大谷社長のリーダーシップです。例えば大谷社長は、M&Aで検討を要する重要なファクター数値を把握し、財務分野の深い知識をお持ちなので、取締役会においては専門性を有する取締役らとリスク分析の議論が具体的数値をもって活発になされています。会社のガバナンスにおいて、社外役員との良いバランスを生み出していると感じます。

大木 制度面でも、当社が採用する監査役会設置会社という形態は、ガバナンスの基盤を強固にしていると感じます。「攻め」の経営を担う取締役会と、「守り」として独立した立場でチェック機能に専念する私たち監査役の役割分担が明確だからです。私自身、長年この会社に在籍しており、これまでの会社の考え方が染みついていると思いますが、それでも客観的に見て、この明確な役割分担と独立性の確保が、健全な経営を支えていると感じています。

佐野 近年は監査等委員会設置会社へ移行する企業も増えていますが、当社が監査役会設置会社を維持しているのは、監査役が取締役会での議決権をもたないことで、取締役会の意思決定からは距離を置き、中立的な立場で監査に専念することで取締役の高い専門性を最大限に発揮できると考えているためだろうと推測しています。

そして、会社の持続可能性という観点ではサクセッションプランも重要なテーマですが、こちらも指名・報酬等諮問委員会等でしっかりと議論が進められていることを確認しています。これだけ社会的意義の大きいビジネスですから、未来を見据えたガバナンス体制を着実に構築していく必要があります。

「監査は経営への『気づき』。
変化の時代に進化を促す存在に」

「1兆円ビジョン」実現に向け、持続可能な監査体制を構築する

水谷 今後の最大の課題は、M&Aによる会社の急拡大に対して、バックオフィスや内部統制の仕組みがしっかりと対応し、追いついていくことだと考えています。「攻め」の経営を支える強固な「守り」がなければ、持続的な成長は望めません。成長スピードに応じてガバナンス体制も常に進化させる必要があり、その基盤となる「仕組みづくり」を常に見守ることが、私たち監査役の重要な役割です。

佐野 「仕組みづくり」の中でも、私たちが特に注力しているのが「属人的にならない監査役会の体制確立」です。各監査役が相応のスキルや経験を有するのは当然としても、それに依存せず、将来、監査役が交代しても監査が間断なく一定以上の水準で続けられる持続可能な体制を私たちの任期中に構築したいと考えています。そのため、経営監査室と毎月協議を行って連携を深め、内部監査の高度化に対し意見を述べたり、監査役監査の実効性を高めるためにスタッフを配置していただいたりする等、具体的な体制強化を進めています。

私たちがここまで持続可能な監査体制にこだわるのは、当社グループが「売上高1兆円」という大きな成長目標を掲げているからです。このような数値目標は、ときとして質を伴わない拡大を招くリスクもはらんでいます。そうした事態に陥ることなく、質の高い成長を実現していくために、私たち社外監査役を積極的に活用していただくことを期待しています。

大木 監査役会の使命は、ガバナンスと信用力の向上に尽きます。監査役会がしっかりと機能することで、株主の皆さまや患者さま、お客さまからの信頼につながります。

本来ならば監査役は目立つべき存在ではありません。なぜなら、「監査役が目立たない」ことこそ、会社が健全である何よりの証左だからです。私たちは、皆さまの目に触れることのない場所から当社グループの健全な経営を力強く支え、すべてのステークホルダーの皆さまの利益に貢献していきたいと考えています。

「時に厳しい視点で指摘することが、長期的な企業価値向上につながる」

揺るぎない信頼と安心を。ステークホルダーの皆さまへのメッセージ

水谷 当社グループが担うのは、地域医療を支えるという社会的意義の大きい事業です。私たちは、その社会的使命と創業以来の企業理念を常に念頭に置き、すべてのステークホルダーの皆さまとともに、持続可能な価値を創造できるよう、ガバナンスの観点からしっかりと支えていきます。皆さまのご期待に、着実な成果をもってお応えしていく所存です。

佐野 私たち監査役が時に厳しい視点を持つのは、それが経営の健全性を高め、長期的な企業価値の向上に不可欠だと信じているからです。株主・投資家の皆さまをはじめ、あらゆるステークホルダーの皆さまのご期待に応えられるよう、これからも厳しい監査と建設的な提言を続けていきたいと考えています。当社グループの挑戦と成長にご期待ください。

大木 常勤監査役として、そしてひとりの薬剤師として、皆さまの信頼と安心を守り抜くことを約束いたします。私たちの監査活動の原点は、常に患者さまやお客さまの安全で安心な毎日にあります。その原点を常に忘れることなく、日々の職務に邁進していきます。当社グループの未来に、ご期待いただければ幸いです。